みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

「第三集」(昭和2年の夏に詠まれた詩)

2017-03-17 12:00:00 | 賢治作品について
 さて先に下表において

下段の方の「10番稿」は、「冷笑と慢」だけが封印の主な理由であったわけではなく、他にももっと何らかの大きな理由があったのではなかろうかと私は述べた。
 しかも【賢治下根子桜時代の詩創作数推移】は下表の通りだから、

             <『新校本宮澤賢治全集第十六巻(下)・年譜篇』(筑摩書房)よりカウント>
もしそのような理由があったとすれば、特に昭和2年の夏に詠まれた「春と修羅 第三集」に収められた詩稿群の中にそれが見つかりそうだ。
 なぜならば、昭和2年3月~8月迄は極めて旺盛だった賢治の詩の創作であったが、この8月頃を境としてしばらく途絶えたことが一目瞭然だからである。では、賢治はなぜ急激に創作意欲が萎えてしまったのだろうか。そこで、当該の詩篇
を読み直してみる(ただし〈七三〇ノ二 増水 〔一九二七、八、一五、〕〉ということで日付は推定だから、この際は除く)と、「金策 」では僻み、「僚友」では疎外感、〔もうはたらくな〕では自暴自棄、〔二時がこんなに暗いのは〕では不安、〔何をやっても間に合はない〕では失意などがそれぞれの詩篇から感じられるので、この頃の賢治は精神的に相当参っていたのであろうということが推測される。したがって、これらの詩篇から窺える賢治の心中は、伊藤忠一に詫びた「殆んどあすこでははじめからおしまひまで病気(こころもからだも)みたいなもので」という厳しい自省とまさに即応してる。
 そしてそれ故に、あの「黒クロース表紙Eの力紙」に「疲労時及病中の心ここになき手記なり」と賢治はと書いて封印したのだと解釈すれば事の顚末が私にはすんなりと腑に落ちる。言い換えれば、これらの下段の詩稿の中で「10番稿」された詩篇には〝農民に対する冷笑や己の慢〟のみならず、賢治自身が精神的に相当参っていたことも封印の強い理由の一つだったということが否定できなくなってきた。

 そして残りの〔あすこの田はねえ〕「野の師父」「和風は河谷いっぱいに吹く」については、もっと大きな理由があるのではなかろうかと私は直感していたが、それがすこしずつ確信に変わりつつある。

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