みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

「堅雪かんこ、凍み雪しんこ」

2021-02-14 10:00:00 | 賢治作品について
《「すが渡り」をしている?白鳥たち》(2021年2月13日撮影、花巻外台川原)

 昨日(2/13)、車に乗って花巻に戻っていたら、カーラジオから澤口たまみ氏の声が聞こえ、

 「堅雪かんこ、凍み雪しんこ」って、賢治の創作なのだろうか、それとも地元で歌われてきたものなのだろうか。

というような意味のことを喋っていた。そう、賢治のあの童話「雪渡り」に関して喋っていたのだった。
 ちなみに、この童話はこう始まっている。

     雪渡り その一(小狐の紺三郎)
 雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑かな青い石の板で出来てゐるらしいのです。
「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」
 お日様がまっ白に燃えて百合の匂ひを撒きちらし又雪をぎらぎら照らしました。
 木なんかみんなザラメを掛けたように霜でぴかぴかしてゐます。
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」
 四郎とかん子とは小さな雪沓をはいてキックキックキック、野原に出ました。
 こんな面白い日が、またとあるでせうか。いつもは歩けない黍の畑の中でも、すすきで一杯だった野原の上でも、すきな方へどこ迄でも行けるのです。平らなことはまるで一枚の板です。そしてそれが沢山の小さな小さな鏡のようにキラキラキラキラ光るのです。
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」
             〈『宮沢賢治童話集8』(ちくま文庫)125p~〉

 そして実はこの件に関しては、過日(1月25日)大迫の氷筍を観に行った際に『「早池峰と賢治」の展示館』に立ち寄ったのだが、その時館長の浅沼利一郎さんから、こんな
【浅沼利一郎氏の取材メモ】

を見せて貰い、「堅雪かんこ、凍み雪しんこ」に似た歌がここでも歌われていていたのだ、と教わった。

 雪渡りカンコ すが渡りカンコ
 カンコのお寺さ 小豆鳥とまった
 なにくそたれた あずきくそたれた
 なにもてさらた さらもてさらた
 この歌は権現堂山を越えて来た亀ヶ森地区に(雪渡りカンコ)口遊び唄として唄われていた。

 中には、「すが渡り」という言葉も見える。たしかにそうだった。私も子どもの頃はまさに、「こんな面白い日が、またとあるでせうか。いつもは歩けない黍の畑の中でも、すすきで一杯だった野原の上でも、すきな方へどこ迄でも行けるのです」 と思ったものだ。そしてこの「どこ迄でも行ける」ことを、私たちも「すが渡り」と呼んでいた。

 よって、この「雪渡り」はもちろん賢治の創作であろうが、全くのそれだったわけではなく、この〝(雪渡りカンコ)口遊び唄〟がその大きなヒントになったのではなかろうか。ちょうど、稚児剣舞がヒントとなって私の大好きな原体剣舞連が生まれたように。それは、賢治はしばしば大迫を訪れている(その際の常宿が石川旅館であり、『「早池峰と賢治」の展示館』の二階に一部再現展示)し、「風の又三郎」の原風景が大迫の沢崎分教場等にも見られるからでもある。

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
            ☎ 0198-24-9813
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 また、2020年12月11日)付『岩手日報』にて、『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』の「新刊寸評」。
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