田中智学の位置付け

《『イーハトーブと満州国』（宮下隆二著、PHP）の表紙》の表紙》

　ところで、田中智学は日蓮宗の世界においてどのように位置付けられているのだろうか、ということが私はこれまで分からぬままにいた。そのことを、宮下氏が次のように述べていた。

　法華経の理想とは、｢一天四海皆帰妙法｣つまり、世界すべてが法華経の教えに帰依し、佛のもとに真実平和で平等に生きる世界の実現である。…(投稿者略)…
　日蓮という人は、その理想を、愚直なまでの激しさで実現しようとしたのである。
　彼の死後、多くの優秀な弟子たちが現れ、時に辛辣に、時に強引に、他宗や為政者への法論を挑んできた。しかし、日蓮の願った社会変革という理想を、真に正しく受け継いだのは、明治の御代に颯爽と登場した、田中智学を措いては居なかったであろう。

　　　　　　　　　　　　　〈177p〉
　そうなんだ、田中智学という人物は日蓮の理想を真に正しく受け継いだ唯一の人物と言ってほどの人なんだ。私は、日蓮が鎌倉時代の弘安5年（1282年）に亡くなった後も多くの優秀な弟子が現れていたとばかり思っていた。日蓮ような、あるいは智学のような僧がその時代時代に応じて輩出していたとばかり思っていたのだが、そうでもなかったのか。

　しかも、続けて、

　廃仏毀釈の嵐が吹き荒れた頃、多くの仏教者が寺の経営に汲々とするか、山中で孤独に座禅を組んでいた時代に、少なくとも宗教界では智学だけが、社会的な視座を持っていた。

　　　　　　　　　　　　　〈177p〉
と宮下氏は断定しているから、この断定に従えば、智学が如何に優れた宗教家であったかということが導かれる。

　そして同氏は、

　智学の活動の根本にあったのも、日蓮と同じく、法華経に基づく社会変革の視点であった。彼はそれを、極めてモダーンな形で実現しようとしたのである。
　それに対して、時代が暗く黄昏れていくなかで、日蓮のような高邁な理想もなく、智学のように卓越した構想力もない人々が、極めて短絡的な手法で、昭和維新を目指してテロに奔った。

　　　　　　　　　　　　　〈177p〉
と鮮やかに解説してくれていた。日蓮宗の中では日蓮を除けば、智学はずば抜けて傑出した僧だったのか。
　なお、

　国柱会は、戦中に智学を喪い、多くその影響力を減じた。戦後もその命脈は保たれてはいるものの、もはやかつてのような存在感はない。

　　　　　　　　　　　　　〈106p〉
のだそうだ。そして、それと入れ替わるように、

　戦前に成立した在家の法華経系教団（創価学会、霊友会、立正佼成会）<*1>が、戦後急成長し、各界に大きな影響力を振るっている

　　　　　　　　　　　　　〈106p〉
ということも同氏は述べていた。

　お陰様で、歴史オンチ・宗教オンチの私も少しずつ見えてきた。

<*1：投稿者註>　田口昭典氏によれば、日蓮宗の主要宗派は以下のとおり。

　　　　　　　　　　　〈『宮沢賢治と法華経について』（田口昭典著、でくのぼう出版）54p〉

　続きへ。
　前へ　。
　“『宮澤賢治と石原莞爾』の目次”へ。

　続きへ。
前へ　。
　“　『宮澤賢治と石原莞爾』の目次”へ。
　”みちのくの山野草”のトップに戻る。

********************************《三陸支援の呼びかけ》*********************************

　東日本大震災によって罹災したが、それにも負けずに健気に頑張っている（花巻から見て東に位置する）大槌町の子どもたちを支援したいという方がおられましたならば、下記宛先に図書カードを直接郵送をしていただければ、大槌町教育委員会が喜んで受け付けて下さるはずです。新設された小中一貫校・大槌町立『大槌学園』の図書購入のために使われますので、大槌の子どもたちを支援できることになります。

　〒　０２８－１１２１
　　　岩手県上閉伊郡大槌町小鎚第32地割金崎１２６
　　　　　　　　大槌町教育委員会事務局
　　　　　　　　　　　　　　　　　　教育長 様
　　　なお、大槌町教育委員会事務局の電話番号は
　　　　　　　　０１９３－４２―６１００
　　　です。