岩手の野づら

『みちのくの山野草』から引っ越し

昭和初期の「法華経の時代」

2018-03-05 09:00:00 | 賢治と法華経
《『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著、PHP)の表紙》

 昭和初期という時代が法華経との関わりでいうとどういう時代であったのかというと、宮下氏によれば、
 日本が戦争へと坂道を下っていった時代に、軍人、民間人を問わず多くの国家主義者が現れ、数多くのテロ事件を起こした。そのような急進的右翼は、国家神道の影響下にあった考えられがちだが、実は法華経の影響を受けていた人物が多数いたのだ。
 たとえば、『国家改造案原理大綱』を著し、二・二六事件の精神的指導者(ママ)して死刑となった北一輝。…(投稿者略)…特定の宗派・宗教団体に属しているわけではなかったが、日夜法華経を読誦し、霊と会話する神秘家でもあった。…(投稿者略)…
 また、帝都を震撼させた血盟団事件の首謀者であった井上日召も、茨城県大洗町の日蓮宗系の僧侶である。彼にとって事件は、佛行の一つであったという。
            〈『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著、PHP)97p〉
 私も、これらの国家主義者井上日召については法華経信者かなとある程度は思っていたが、同北一輝はまさに国家神道に拠っていたとばかり思っていたが、来たも熱心な法華経信者だったのか。そしてまた、テロ事件とは言えないにしても、法華経信者の石原莞爾が企てた満州事変もそれに似たような事件だ。
 ということは、法華経の信者の石原が昭和6年に満州事変を、昭和7年に同じく井上日召が血盟団事件を、そして昭和11年に同じく北一輝が二・二六事件を引き起こしたという流れになる。つまり、昭和初期の大きな事件や事変を法華経信者が引き起こしていたとも言えるからを、昭和初期はある意味たしかに「法華経の時代」と言えそうだ。

 さらに宮下氏は続ける、
 二・二六事件をはじめとする、いわゆる昭和維新の背景にあったのは、農村の疲弊であった。NYウォール街の株の大暴落に端を発した世界恐慌は、日本にも及んだ。昭和恐慌の影響を最も受けたのは農村、それも東北の農村である。娘の身売りや赤子の間引きも、珍しいことではなかった。
 ただでさえ働き手が少ない農村から、若者が徴兵されてくる。…(投稿者略)…彼らと日常的に接する機会の多い青年将校たちが、農村の実情を耳にして、義憤に燃えたことも当然のことである。
           〈99p〉
と。たしかに、当時の東北の農村は疲弊していた。実際に、娘の身売りが当時の新聞にも載っている

 そして、
 田中智学は、ある意味、日蓮の理想である「宗教的理想郷」づくりを、愚直なまでに実現しようとしたわけである。「四海一天皆帰妙法」という言葉は、世界中が法華経という正しい信仰に帰依した結果生まれる、理想の世界のことを言う。
 これは、賢治が「世界全体が(ママ)幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」と述べたこととも、完全に一致するのである。
 賢治はその作品において、一種自己犠牲的な作品をいくつか書いている。…(投稿者略)…
 崇高な理想に基づく自己犠牲とテロリズムとは、その根本において異なるものであるが、しかし表面的には混同されやすいのも事実である。…(投稿者略)…
 しかし手段においてはともかく、その根底にある社会変革の必要性の認識においては、賢治と前述の国家主義者たちとは、明らかに共通しているのである。
           〈100p~〉
という見方をしていた。
 したがって、
 賢治は、石原莞爾とのみならず、井上日召や北一輝とも通底していた部分が少なからずあったということは否定できなさそうだ。
それは、いずれの人物も、同時代の熱心な法華経信者だったという紛れもない事実があるからだ。

 そしてまた、以前の投稿、〝法華経を避けていては「本当の幸い」には迫れない〟において、
 「みんなの本当の幸い」ということであれば、当然あの「世界がぜんたい幸福にならなければ個人の幸福はあり得ない」を避けて通ることができないはずだ
と私の直感を述べたわけだが、やはりそれは間違っていなかったようだ。それはもちろん、先に引いた
 「四海一天皆帰妙法」という言葉は、世界中が法華経という正しい信仰に帰依した結果生まれる、理想の世界のことを言う。
 これは、賢治が「世界全体が(ママ)幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」と述べたこととも、完全に一致するのである。
ということを私は知ったからだ。
 どうやら。賢治がいうところの「みんなの本当の幸い」とは、法華経信仰、つまり「四海一天皆帰妙法」に基づくものであるということは、もはや間違いなさそうだ。

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