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《『日本の農本主義』(綱澤 満昭著、紀伊國屋新書)》
さて、五・一五事件を受けてその後内閣等はどう対応したのかというと、綱澤氏によれば、
昭和七年六月一日~一五にち斎藤内閣によって非常時局収拾のために召集された第六二臨時議会には多種の農民団体の請願運動があいつぎ、借金の棒引き、あるいは軽減、または償還延、農産物の価格引き上げ、国家の損失補填、肥料資金の国家補償、利子及び税の軽減などが農業恐慌対策の合言葉として全国に宣伝され、時局匡救の焦点は農村問題に集中された。
〈『日本の農本主義』(綱澤 満昭著、紀伊國屋新書)93p〉ということである。そこで私はお陰様で、そうか、「時局匡救の焦点は農村問題に集中」したのかということを初めて知った(私は完全に無知であったし、今迄知ろうとさえもしなかった自分を恥じた)。
また、綱澤氏は、
五・一五事件、血盟団事件などが農村のこうした実情や政治の貧困に対するつきつめた気持ちから起こったものであると判断した斎藤内閣は、組閣早々(昭和七年六月一日)第六二臨時議会を召集し、農村救済策を審議した。その結果は速やかに改めて臨時議会を開き、通貨流通の円滑化、農村その他負債整理、公共事業の徹底的実施、農産物そのた重要産業統制などに関する各般の法律、予算案を提出すべきであるという決議を可決した。そして八月二二日、世にいう「救農議会」(第六三臨時議会)が召集されたのである。この議会で農村経済更生費が認められ、農林省に「経済更生部」が設置された。いよいよ「経済更生計画」が展開する。
〈同95p〉とも解説していた。そうだったのか、五・一五事件後の“挙国一致”内閣 の首相、岩手出身の斎藤実はこの時に、「農村救済策」のために速やかに法律や予算案を提出し、名前だけは聞いていたのだが、あの「経済更生計画」を展開していったのか。私はこのようなことなど、今迄まったく知らなかったので、そういうことかと少しだけ目から鱗が落ちた。
そして、おそらくこの「経済更生計画」が松田甚次郎の活動や取り組みに微妙に絡んでくるに違いないと、直感した。それは、先の「彼の運動と実践力を利用しようとし、「高松家」より出された「有栖川宮記念更生資金」という餌であった」という引用を思い出したからでもある。
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