みちのくの山野草

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取りあえずのここまでのまとめ

2022-02-20 16:00:00 | 一から出直す
《三輪の白い片栗(種山高原、令和3年4月27日撮影)》
 白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
 そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。

 さて、私はこのシリーズ〝一から出直す〟の出だしで、
 ところが、十数年前から賢治に関する事柄を実際に検証し続けた来たところ、私は文学については門外漢であって、賢治に関しては非専門家ではあるのだが、現「賢治年譜」等の中には常識的に考えておかしいことが少なからずあるということをそれほど苦労もせずに知った。しかも、実際に検証してみるとそれらの殆どはやはり皆おかしかった。そこで、私のかつての賢治に対する評価は様変わりしてしまった。私のそれまでの賢治像は創られたものをそのまま信じてきたがゆえのバイアスの掛かったものであり、それはリセットせねばならないし、検証結果については受け入れざるを得なくなったからだ。そこでここからは、バイアスが取り外された目で賢治に関する資料等を見直すことによって一から出直してみたい。
と述べて、ここまで取り組んできたのだがその結果、以下のような事柄が取りあえず言えそうだ。

⑴ 賢治が巷間言われているような聖人であったということを客観的に裏付けるような事柄はほぼ見つからない。そうなったのは、生前の賢治、生身の賢治を殆ど知らない高名な賢治研究者等が賢治作品をそのまま事実であると、あるいは、ある特定の人物の記述や伝聞を検証することもなくそのまま事実であると思い込んだが故であったということを否定できないことをこのシリーズ〝一から出直す〟を通じで知った。
 
⑵ 一方、賢治が聖人化されていった大きな理由の一つに、『宮澤賢治全集』(文圃堂)を宣伝するための商業戦略があった、とも言えそうだ(その典型が古谷綱武の寄稿「全人宮澤賢治」に垣間見えた)。
 
⑶ はたまた、「二月十一日午後七時、皇紀二千六百年のこの佳日を卜して江別白雲荘にて賢治の会を催す。參集せる會衆四十餘名……「人間的完成者宮澤賢治」と題し小田邦雄氏一時間半に渉って熱弁をふるふ」ということだし、小田邦雄は日本文学報国会会員で大政翼賛会北海道支部主事だったというから、大政翼賛会は賢治を国策に利用しようとした、とも言えるだろう。

⑷ 『イーハトーヴォ』を振り返ってみると、賢治を神格化や聖人化しようとする人がいたり、そのような動きは垣間見られるが、それほどまで徹底されていたわけではない。逆に、生身の賢治を飾らずに語っている人物も見られたから、賢治の本格的な聖人化等まだであり、それはこの後のことだったということになりそうだ。

⑸ 『朗読詩集 常盤樹 他十二篇 』42頁の「解説」には、
 この平凡なやうな、へりくだつた、最低の願のやうに見える「サウイフモノニワタシハナリタイ」という聲をよくきいてゐると、それが實に大きな願であることにわれわれは氣づいてくる。この「私」を滅した、はからひや高ぶりの境地に人は容易には到り得ない。しかし斯ういふ人にして始めて萬人の眞の友となり得るのだというふとをわれわれはだんだんと氣づいてくる。この詩人は岩手縣の農民のためにその一生を捧げた。
ということなどが書かれてあった。よって、「この「私」を滅した」という「解説」中の表現から示唆されるように、「滅私奉公」という心構えを戦時下の国民に醸成するために賢治は利用されたのだということを否定のしようがない。

⑹ 羅須地人協会時代の実践等に関して、谷川徹三は、あの講演「今日の心がまえ」において、
 とにかく実践した。その実践に意味があるのであります。その実践を、宮沢賢治は自分の生まれた地方の農民たちの友としてしたのであります。
と論を展開していたが、私は素直には受け容れられない。その「生活者」も「実践」も谷川は裏付けを取っていないし、私が検証した限りではそんなのは勝手な谷川の思い込みであるということが導かれるからである。
 
⑺ 上記のことは、佐々木多喜雄氏が実証的な論考「宮沢賢治小私考」における、
 中央文壇関係者による賢治の農業実態についての見方や認識は、前述した賢治の農業実態からすると、他からの伝聞や賢治の作品やメモをそのまま真実とした故に生じた、本当の姿からは遠くかけ離れた、架空の虚像であると言っても過言ではないであろう。
              〈『北農』(第75号第2号、平成20年4月)80p〉
という主張からも頷ける。しかも、佐々木氏は元上川農業試験場長であり、その道の専門家だからなおさらにである。

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