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みちのくの山野草

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加藤完治とは如何なる人物だったのか

2020-11-06 12:00:00 | 甚次郎と賢治
《中国服姿の加藤完治(「満蒙開拓青少年義勇軍」(上 笙一郎著、中公新書)より)》

 さて、加藤完治とは如何なる人物だったのだろうか。『満蒙開拓青少年義勇軍』(上笙一郎著、中公新書)や『「賢治精神」の実践』(安藤玉治著、農文協)などによれば、
 加藤完治は明治11年1月22日に東京本所の旧士族の家に生まれ、第四高等学校(旧制)時代に女性宣教師に導かれてクリスチャンになり、その頃は天皇から乞食に至るまで皆キリスト教に改宗せねばとさえ思ったほどであるという。
 ところが、東大を目指しての3年間の浪人生活や、結核を患う恋人との短い結婚生活などが原因となって熱烈な天皇制的農本主義者に変わったという。キリスト教信仰を見失った加藤は夏の赤城山で大嵐にあって死にかけたことから突如生きる意欲を取り戻し、「生きるということを極めた以上は、衣食住というものがなければ生きてゆくことが出来ない。その生を徹底するためには、第一ここに衣食住というものがなければならぬ。その生産をする農業というものは尊い業務だ」と思うに至ったということらしい。
 東大卒業後、帝国農会や内務省に務めて中小農の保護調査に従事したが、人生問題に悩んだ末に農民と生きる決意をし、1913年に農本主義者山崎延吉が校長をしていた愛知県立安城農林学校に赴任。1915年、デンマークの国民学校をモデルにして山形県に創設された山形県自治講習所の初代所長に推薦される。
 さらに、1922年からの1年4ヶ月のヨーロッパ視察後、石黒忠篤の勧めで1926年に茨城県友部町宍戸に「日本国民高等学校」を創立し、加藤は校長となって農民子弟教育にあたった。この「日本国民高等学校」とは、校長の人格が教育の基本をなすというデンマークの国民高等学校本来の理念を追求する民営の全寮制私塾であるはずだったが、現実には筧克彦の古神道に基づく農本主義思想を鼓吹するという加藤の教育方法は、デンマークのそれとは全くちがっていたという。
 そして、1931年に満州事変が起こると加藤は東宮鉄男(満州農業移民の基礎を築いた人物、張作霖爆殺事件の立案・実行者の一人とも)と共に満州農業移民計画を取り進めたという。1932年に始まった満州への成人からなる第一次武装移民等の失敗に鑑み、「純真ノ少年」は武装移民に適性があるという考えに東宮は至ったようだ。一方、加藤は国民高等学校の生徒の内で農家の二、三男の卒業後の身の立て方について思い悩んだ結果、辿り着いた結論が中国大陸への移民であった。そこで加藤は満蒙開拓青少年義勇軍の設立にかかわり、1937年に茨城県内原へ移転した日本国民高等学校に隣接して、1938年(昭和13年)満蒙開拓青少年義勇軍内原訓練所を開設し、翌年加藤は同訓練所の所長となった。
(文責:投稿者)
と言える。
【 空から見た内原訓練所】

   <『写真集 満蒙開拓青少年義勇軍』(全国拓友協議会編、家の光協会)より>
 そして前回述べたように、加藤はここ内原訓練所から計86,530名の青少年義勇軍を満州に送り出したのだった。その渡満の壮行式の一コマが以下のようなものである。
《3 渡満壮行式》

   <『写真集 満蒙開拓青少年義勇軍』(全国拓友協議会編、家の光協会)より>
 すると心配なのは、このうち無事日本に戻ることができたのはどの程度いたのだろうかということだ。上笙一郎によれば、24,200名が犠牲になったということだから、約そのうちの28%は日本に戻ることができなかったようだ。さて、このことに対して加藤完治は如何ほど心を痛めたのだろうか。

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