みちのくの山野草

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「鳥越隣保館」の落成

2020-12-28 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』〉

 では今回は「鳥越隣保館」に関してであり、「我等の殿堂「鳥越隣保館」の落成」という項からである。
 そこには、松田が「有栖川宮記念更生資金」を受けたことに関して、
 昭和七年の秋、「県庁の役人が役場に私を呼んで事業関係一切を一日掛かりで調査されたことはあるが、こんな有難いことになるとは露知らず、悩んだり、(小野)先生の許に走ったりしていたのである。早速、県に問合せたら一月十四日に賜り、紀元の佳節に(二月十一日)に県庁で伝達式をやるのだ、ということが分かったので…投稿者略…
             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)69p〉
と述べられていた。このことに関しては『土に叫ぶ』の中で、甚次郞自身も「御奬勵金拜受」という項の中で、
 紀元の佳節に縣廳で傳達式が挙げられ、高松宮家より『有栖川宮記念更生資金』拜受の榮を賜つた。
 表彰狀には畏くも「協力一致風教ノ振作及共同施設ノ發達ニ努メ成績見ルベキモノアル趣」とあつた。
             〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)83p〉
と述べていた。私は今まで「風教」とか「振作」という単語を全然知らなかった。そこで広辞苑を見てみると、
【風教】ふうきょう
   ①風俗と教化
   ②徳行を以て教え導くこと。風化。
   ③風習。風俗。
【振作】しんさく
   勢いをふるいおこすこと。盛んにすること。振興。
とあった。そこで私はやっと、ふむふむ、確かにそう言えるなと納得した。それまで甚次郞が取り組んできたことはたしかに徳行と言えるし、そのことによって甚次郞は塾生たちをたしかに教え導いたと言えるからだ。
 なお、それまでの甚次郞は、
              〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)81p〉
のであったが、この「有栖川宮記念更生資金」をもらったことを境にしてそのようなこ心配はなくなったということはご承知のとおりでしょう(なお、このことについては後ほどまた触れたい)。
 再び『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』に戻る。同書によれば、この「『有栖川宮記念更生資金』拜受の榮を賜つた」ことを記念して「鳥越隣保館」

             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)73p〉
が昭和8年10月30日に落成したという。なお、同館では「農繁期託児所」も開いたのだそうだ。のみならず、「共同炊事場、共同風呂

             〈同74p(前列左端が松田甚次郎だ)〉
もつくられたし、農家の栄養改善会も度々開かれた。映画の夕も年一二回はここで行われた。村の敬老会、母の会、出産扶助会もここが会場であった」(同76p)という。となれば、たしかに、甚次郞の取り組みは農村文化の向上運動であった、と言えるだろう。
 よって、にも拘わらずあの人が、「時流に乗り、国策におもね、そのことで虚名を流した」と甚次郎のことを一方的にくさしていたということは、実は甚次郞のことをよく知ろうとしていないかったか、あるいは私情が絡んでいたからであったということが否定できないということかな?

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
            ☎ 0198-24-9813
 なお、目次は次の通りです。

 そして、後書きである「おわりに」は下掲の通りです。



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