みちのくの山野草

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羊を飼ってホームスパン

2020-12-23 20:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』〉

 では今回は、「羊を飼ってホームスパン――松田式紡毛機」という項からである。それは、
 自分たちの生活を少しでも楽に――その一点にしぼってめぐらす創意、そして皆でやる協力共働の力で、農産加工の途は次々と開かれていった。
             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)56p〉
というように始まっていた。では一体、それは具体的にはどんな物だったのだろうか。それについては、安藤は次のように、
 なかでも傑作だったのは「松田式紡毛機」だった。畑作のかたわら緬羊を飼って繁殖し、剪毛するまではよいのだが、さて被服の自給(紡ぎ、織る)となると、そう簡単でないのが実状である。…投稿者略…
 紡毛に必要な小道具は簡単につくれても、紡毛機だけは手が出なかった。さりとて高価な機械を買う力はない。この障害にたいする彼の対策は、いつもながら執拗であった。
 問題にくらいついたら解決するまで途中で放念することのできない性の人であった。苦心の末、古自転車を分解して紡毛機に組み立てることに成功した。
             〈同56p~〉
と続けていた。
 ちなみに、この項の中には、この「緬羊を飼って」いる写真が載っていた。

             〈同56p~〉
 それから、『土に叫ぶ』には、その紡毛機の写真が載っている。

             〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)215p〉
 そして、次のことに関しては甚次郞自身も述べているのだが、安藤は、
 古自転車を分解して紡毛機に組み立てることに成功した。一台の古自転車から二台の紡毛機がわずかの工賃で出来上がった。この苦心のヒット作品は「全国青年一人一研究展」に出品して、特別賛辞を受け、各地から注文されるまま一台五円也で三十数台作って分譲している。
             〈『「賢治精神」の実践【松田甚次郎の共働村塾】』(安藤玉治著、農文協)57p〉
と述べているから、この紡毛機は廉価で優秀だったのだろう。ちなみに、『土に叫ぶ』によれば、「二臺の紡毛機が僅か三圓五十錢の工費で出來上がつた」というから、「わずかの工賃で出来上がった」と言える。それ故にだろう、甚次郞は上掲書で「この松田式紡毛機も、自給自足、労作経営主義の賜である」と述べていた。
 そして続けて、甚次郞は、
 又染色も出來る様になり、作業場の一室には昔の絹機を改良した織機があつて、加工をつゞけて居る。
             〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)215p〉
と述べていたので、私の持っていた疑問の半分が解けた。
 それは以前から、下掲の
《賢治詩碑の前での集合記念写真<*1>》

             〈『拡がりゆく賢治宇宙』(宮澤賢治イーハトーブ館)〉
の松田甚次郎が着ている上着は、ツイードのホームスパンに違いないと思っていたのだが、羊の毛は紡いだとしても、どのようにして織ったのだろうか、と疑問に思っていたからである。そこで、あっそうか、「織機があつて、加工」していたから出来上がった一つなのだと了解できたからだ。

<*1:> 後列、右から3番目が松田甚次郎である。昭和14年3月末に松田甚次郎が南城振興村塾の指導に来た際のものであろう

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
            ☎ 0198-24-9813
 なお、目次は次の通りです。

 そして、後書きである「おわりに」は下掲の通りです。



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