登場人物の顔を表現する台詞として以前にこんな台詞を書き込みましたが、その第二弾です。こちらの方がユーモアがある上手だな。さすが大御所、ロス・トーマス旦那だけのことはある。
『五百万ドルの迷宮』を何年かぶりに読み返したのだが、筋が分かっていてもストーリーに引きずり込まれる。何といっても、ウーとデュラントの描き方の見事なこと。詐欺師がという職業がとっても魅力的なお仕事に見えてしまいます。
年老いたゲリラを、潜んでいるフィリピンの山奥から香港に連れ出す仕事に50万ドルを支払う、そんな美味しくも怪しい仕事がテロ研究専門家に提示された。知り合いを伝って探し出した実行人がアーティー・ウーと”糞ったれ”デュラント、"アザガイ"・オバービー。それに雇い人から付けられた元シークレット・サービスの美女、ジョージア・ブルー。彼らの騙し合いか、それとも以心伝心の協力変化技の結果がこうなったのか。
自称中国皇帝位継承者のウーが、自分の身元の説明を求められた時に、中国皇帝位継承の正当性を語った直後に、今度は会って間もないテロ研究家のブースの身元を尋ねるための話の持って行き方が洒落ている。
「私は常々、立派な家系図より市場性のある才能の方が精神的安定感を得るのにはるかに役に立つ、と考えている。家賃支払日になっても文無しの場合、独立宣言に署名したとか、ビケットと一緒にセメタリ・ヒルズを馬で駆け上がったとか、ジョン王にペンを貸した、とかいった連中の末裔であったところで、さして役に立たない。一方、ポケットに手を突っ込んでも小銭もなく、出かけては少しでも金をかき集めなければならない場合、桶屋であろうと、牧師、車大工、粉屋、あるいはテロリズムの専門家でもいい、売れる才能を持っていることがわかっていれば心強い。」