お愉しみはココからだ!!

映画・音楽・アート・おいしい料理・そして...  
好きなことを好きなだけ楽しみたい欲張り人間の雑記帖

「担当直入というのが好きなもので」

2005年07月17日 | パルプ小説を愉しむ
『鏡の迷路』(ウィリアム・ベイヤー)の主人公、ジャネック警部補が相手方弁護士との会合の場で言う台詞。
「ずいぶん無口なんですね、警部補」
ジャネックは肩をすくめた。「担当直入というのが好きなもので」


今までのもの以上に現実の場で使えそうな台詞だと感じ入り、早速メモしました。口八丁の取引先との会話、これぞと目を付けたお相手とのここぞという場での決め台詞等々、有効に使えそうな機会がいっぱいありそうな台詞です。

NY警察特捜班のジャネックは2つの事件を追っている。一つは富豪夫人の殴殺事件。何年も前に発生し、迷宮入りしたものの関係者を常に悩ませつづけている難事件。もう一つは、催眠薬を酒に混ぜて相手を眠らせて金品を盗み取るKOガールズの一人が盗んだと思わせるコンピューターチップの試作品盗難事件。北カルフォルニアのベンチャー企業から保安部長がやってきて、あれこれと聞きまわる。その保安部長自身がとっても胡散臭い輩。

2つの事件が同時並行で進むのですが、実は2つの事件には接点が何もない。単に同時に進んでいるだけなのです。片方だけではパンチに欠ける内容だが、2つあるとそれなりに話が充実するというやつです。

それでもウィリアム・ベイヤーらしく中身の濃い作品です。主人公のジャネック警部補は、犯人の意識を探りつ捜査をすすめる知能派で、デリケートな優しさを持った性格であるがために、自分の精神に負担をかけてしまう。なんと事件を解決してボロボロになってしまった最後では、自ら望んで街中を巡回するお巡りになってしまうのです。

そんなプロファイリングもどきとも言える捜査手法、KOガールズの一人の精神を蝕んでいる幼い頃の近親相姦の記憶を癒してあげる優しいジェネックの会話等々、事件とそれを解決するための謎解きに止まらない緊迫感を持った小説でありました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする