岡崎は名古屋に住んでいた折、小学校の頃の遠足や子供会の行事など
で何度も訪れた懐かしい町である。
とは言っても、知っているのは岡崎公園とお城ぐらいのごく限られた一
画だけで、記憶としても殆ど何も残ってはいない。
二十七曲がりと言われる街道筋を歩くのもこれが初めてである。
岡崎の銘菓と言えば、創業が天明二年の備前屋「岡崎名物 あわ雪」だ。
当地を訪れた際の定番土産は、これと赤だし味噌である。
その店舗を町中で目にしたが、珍しく立寄ることも無くやり過ごした。
理由は簡単で、肉刺が潰れた足が痛み、回り道も寄り道もする気にはなれず、
早く宿に入りたい一心で、只ひたすら前に進み続けてきたからだ。
吉良道の追分けを示す石柱等を見ながら、お城を遠巻きに、何度も曲
がりを重ねる街道を、些か食傷気味に歩いて来た。
途中には気になるところも沢山有ったが、足が痛くてルートを外れるの
も億劫で、「いろは」の案内標柱ばかりを気にして歩いていた。
そんな町中で一際目を引いたのが、街道筋に有った大正6年に建てら
れた岡崎銀行本店の建物だ。
現存する大正時代の数少ない建物の一つである。
赤煉瓦造と御影石(だと思うが)を複雑に組み合わせた手の込んだ作
りは、ルネッサンス様式の建物で、内部は資料館として公開されている。
「人の一生は、重荷を負うて遠き道を行くがごとし、いそぐべからず
不自由を常と思えば不足なし・・・」この先は忘れてしまった。
岡崎城下では、何だかこの遺訓を背負って歩いている様な気がした。
お城には、それを刻んだ東照公の石碑があるらしい。(続)
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