昨年の春頃のお話。
旅の雑誌をパラパラと見ていたら面白そうな本の広告が目に付いた。
傍らに有ったメモ帳に、その本のタイトルと出版社をメモる。

それから何日かして、メモをポケットにねじ込み近所の本屋に行ってみた。
旅の関係本の書棚をつぶさに捜して見るがメモの本が見付からない。
その近隣の書棚にまで範囲を広げて見ても見付からない。
新刊書のコーナーを捜してみるが、平積みされてもいない。
もう出版されている筈なのに、どうしたのだろう。おかしい。
捜しあぐねてカウンターでメモを見せ所在を問うと「その本は置いてない」と即座に言う。
沢山の本が毎日のように出版されている中で、良く調べなくて解るものだ。
書棚に並べてもたいして売れる見込みの無い本だから、仕入れてはいないのか。
よほど特殊な本、マニア向けの本なのか?
心の中でそんな風に考えていたら、こんな本を尋ねた自分が何だか気恥ずかしくなってきた。
「宜しければ、お取寄せしますが・・・」との声に、素直にお願いし、連絡先を告げ本屋を後にした。
本を買うとき、多くの場合は実際本屋に赴き、帯を見て、手にとり中身を確認し、納得してからしか
買わないことにしている。
こうしてお取寄せで本を買うことは先ず無いし、インターネットで中身を見もしないで買うことも無い。
今回は、なぜか書名に惹かれ実物も見ないのに欲しくなった。
本屋からの電話連絡を待つことにした。(続)