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folklore accepted as Japanese history 6

2018-09-25 | ancient history

全国で唯一海幸彦をお祀りする神社
「潮嶽神社(うしおだけじんじゃ)」

 高天原の神様一族の内で、アマテラスの孫に当たる邇邇芸命(ニニギノミコト)が豊葦原水穂の国(または葦原の中国:日本列島の一部)を統治するために降り立った事を、天孫降臨と呼んでいますが、天孫が地上で第一に行った事がその土地の権力者の娘との婚姻でした。婚姻によって自分が権力者の後継者になり、ゆくゆくは首長になるのが目的だからです。では、次に何をしたのでしょうか。『古事記』や『日本書紀』を読む限り、首長の娘を孕ませただけです。ところが、「一夜で孕んだのが信じられないから自分の子じゃない」と拒否したのです。妻・コノハナサクヤ姫が激怒したのも当然でしょう。激怒した挙句、子供が無事生まれなかったら国つ神の子で、天つ神の子だったら無事に生まれるだろう、と産屋に火をつけて出産しました。そして3人の男の子が無事生まれました。3人とも天孫の御子だったわけですが、この後二ニギはどう弁明したのか?しかし彼は二度と登場しません。
 神代の中で、記紀の編纂者たちは、天孫ニニギノミコトに天つ神と国つ神の混血種を創る役割しか与えなかったということです。あとは、イワナガ姫との婚姻拒否により皇族の寿命が縮んだ、という上手い口実を作るのに一役買わされたくらいでした。記紀がニニギノミコトより紙面を割いているのが、「海幸彦・山幸彦」の物語です。歴史的伝承と関係ないようなお伽噺の要素の強い伝承に、なぜ700年前後の歴史書の編纂者たちはこだわったのか、不思議でなりませんでした。
 この物語でのキーワードは、海と山、兄と弟です。最初私は政治的解釈で、弟=大海人皇子(天武天皇)、兄=葛城皇子(天智天皇)だと思いました。劣勢だった弟が最終的には兄を打ち負かす。しかしそうなると、兄に打ち勝った弟は山幸彦なので、海人族に育てられた大海人皇子が山間部の狩猟民族という矛盾が生まれてしまいます。
 狩猟民族または稲作民族VS海洋民族という構図だと、稲作民族が海洋民族を服従させた伝承だと理解できます。記紀が編纂された時代は天武天皇系皇族が権力者でした。天武系つまり海人族由縁の一族が、同族を負け組にすることはあり得ません。海幸山幸の物語をどう理解したらいいのか、ずっと悩まされていました。
 前出の『日本の古代8海人の伝統』にヒントがありました。
―〈山幸彦ははじめは兄の海幸彦に頭の上がらない立場にいる。この山幸彦がひとたび海宮に行って帰ってくると、兄弟の優劣の関係は逆転する。『古事記』によれば、海神からもらった霊力で兄を苦しめた時、兄は「あなたの昼夜の守護人となってお仕えします」と言った。そこで今にいたるまで隼人はその溺れたときの仕業を演じて天皇に仕えるのである。
つまり、山幸彦は支配者となり、海幸彦はそれに仕える臣下となった。このように見てくると、山幸彦の海宮訪問は、王者になるためのイニシエーション(通過儀礼)という性格を持っていたということができる。〉―
 『古事記』では、二ニギの3人の息子の長男はホデリノミコト(火照命)=海幸彦、末弟はホオリノミコト(火遠理命)=山幸彦となっていて、記紀共にホデリノミコトの子孫は九州の隼人族だと書いています。実際に、700~800年代になっても隼人は度々中央に逆らっていました。そして、服従して中央に仕えていた隼人はその忠誠心を忘れさせないために、天皇の前で溺れる仕草の舞いをさせられたり、天皇の宮の垣のそばで吠える犬の役をして仕えさせられたと『日本書紀』に記されています。このことは、海幸・山幸の伝承が九州南部(阿多隼人・薩摩隼人・日向隼人・大隅隼人などの居住地)で周知されていた理由になります。『日本書紀』の一書には、物語の締めくくりとして「世の中の人が失せた針を催促しないのは、これがそのもとである。」と記載していて、海幸山幸噺の主題が「小さな事にこだわりすぎるのは良くない/許す心も大事」という教訓だったのではないか、と思わせるものがあります。
 確かに、王になる前に海宮へ行く場面は、王者になるためのイニシエーションを伝える伝承だったのかもしれませんが、元々はいち地方の素朴な伝承でしかなかったものを、記紀の編纂者が2重3重に他の伝承を組み入れてこの物語を作り上げたようにも感じます。
 
 
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