近年、学校の教科書に書いてあるような「勝者からみた歴史」観を見直すような動きから、興味深い歴史番組がテレビ放映されています。
明治以降の研究者が作り上げてきた既存の見解を、もう一度しっかり研究し直して整理する動きが書籍方面にもあり、この2・3年の間に、江戸草双紙についてのガイドブック的な書籍が何冊も刊行されています。最近の書籍は、一般読者が手に取りやすいように、装丁が凝っていて、挿絵も結構載っています。
でも、近世文学専攻の学生ならともかく、私のように単なる好奇心で読んでいる読者にとって、楽しく江戸草双紙を読むには、第一に「想い入れ」が必要です。最初から『東海道中膝栗毛』を翻刻版で読もうとしても、面白さが半分くらいも伝わらないと思いますし、1冊目に仇討ちものの読本(よみほん)や色恋沙汰の人情本を選んでしまったら、ちょっと苦しいかと思います。
なぜなら、草双紙は現代小説とは文章構成から存在意義まで違っているからです。最初の出会いというのは大事です。その出会いをよくするために絶好な本がありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/de/47a284fc67f01e4e70c18ae24d7a5688.jpg)
現代の戯作者・故井上ひさし氏が1979年出版した『戯作者銘々伝』。山東京伝、恋川春町など12名の戯作者の名前をタイトルに冠した、12の短編が載っています。戯作者を知らなくてもノープロブレム。まるでお芝居を見ているかのような気持ちで、この人は一体誰なんだろう、どういう関係の人なんだろう、どうなるんだろう、と好奇心をぐいぐい引っ張られ、読み終えた頃には江戸人になっています。タイトルになっている戯作者と関係ある人たちや当時の社会的なことも垣間見れます。余りに見てきたような風なので、事実かと間違われそうですが、事実に基づいた創作や作者の個人的見解も交じっているので、興味を持った登場人物は、個別に文献で調べた方がよいでしょう。この本と同じ趣旨で書かれた中編『手鎖心中』(『江戸生艶気樺焼』のパロディに戯作者になる前の大物戯作者が登場)もおすすめです。
これが気に入ったなら、図書館で『日本古典文学全集(頭に『新編』があるかも)黄表紙・川柳・狂歌』という本の黄表紙を読んでみるのがよいと思います。確か挿絵も掲載されています。(黄表紙で挿絵を掲載しないものは、現代の漫画を文字だけにしたのと同じです)元祖黄表紙『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』恋川春町作画、山東京伝大々ヒット作『江戸生艶気樺焼』、江戸の近未来小説など爆笑作品満載。そうそう、『戯作者銘々伝』の恋川春町の物語は感動ものです。
more~!と感じたら、棚橋正博 校注編『江戸戯作草紙』、ちょっと稚拙かもしれませんが一九先輩の妖怪馬鹿噺と有名浮世絵師の挿絵が楽しい『江戸化物草紙』アダム・カバット著などいかがでしょうか。
明治以降の研究者が作り上げてきた既存の見解を、もう一度しっかり研究し直して整理する動きが書籍方面にもあり、この2・3年の間に、江戸草双紙についてのガイドブック的な書籍が何冊も刊行されています。最近の書籍は、一般読者が手に取りやすいように、装丁が凝っていて、挿絵も結構載っています。
でも、近世文学専攻の学生ならともかく、私のように単なる好奇心で読んでいる読者にとって、楽しく江戸草双紙を読むには、第一に「想い入れ」が必要です。最初から『東海道中膝栗毛』を翻刻版で読もうとしても、面白さが半分くらいも伝わらないと思いますし、1冊目に仇討ちものの読本(よみほん)や色恋沙汰の人情本を選んでしまったら、ちょっと苦しいかと思います。
なぜなら、草双紙は現代小説とは文章構成から存在意義まで違っているからです。最初の出会いというのは大事です。その出会いをよくするために絶好な本がありました。
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山東京伝『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』の挿絵のパロディ。
主人公・艶二郎の顔が、著者・井上ひさし氏の似顔絵に挿げ替えてある。
主人公・艶二郎の顔が、著者・井上ひさし氏の似顔絵に挿げ替えてある。
現代の戯作者・故井上ひさし氏が1979年出版した『戯作者銘々伝』。山東京伝、恋川春町など12名の戯作者の名前をタイトルに冠した、12の短編が載っています。戯作者を知らなくてもノープロブレム。まるでお芝居を見ているかのような気持ちで、この人は一体誰なんだろう、どういう関係の人なんだろう、どうなるんだろう、と好奇心をぐいぐい引っ張られ、読み終えた頃には江戸人になっています。タイトルになっている戯作者と関係ある人たちや当時の社会的なことも垣間見れます。余りに見てきたような風なので、事実かと間違われそうですが、事実に基づいた創作や作者の個人的見解も交じっているので、興味を持った登場人物は、個別に文献で調べた方がよいでしょう。この本と同じ趣旨で書かれた中編『手鎖心中』(『江戸生艶気樺焼』のパロディに戯作者になる前の大物戯作者が登場)もおすすめです。
これが気に入ったなら、図書館で『日本古典文学全集(頭に『新編』があるかも)黄表紙・川柳・狂歌』という本の黄表紙を読んでみるのがよいと思います。確か挿絵も掲載されています。(黄表紙で挿絵を掲載しないものは、現代の漫画を文字だけにしたのと同じです)元祖黄表紙『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』恋川春町作画、山東京伝大々ヒット作『江戸生艶気樺焼』、江戸の近未来小説など爆笑作品満載。そうそう、『戯作者銘々伝』の恋川春町の物語は感動ものです。
more~!と感じたら、棚橋正博 校注編『江戸戯作草紙』、ちょっと稚拙かもしれませんが一九先輩の妖怪馬鹿噺と有名浮世絵師の挿絵が楽しい『江戸化物草紙』アダム・カバット著などいかがでしょうか。