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swindlers

2010-05-29 | bookshelf
 錬金術師達は競って、人々を驚愕させるような代物を造ろうと知恵と工夫を凝らしていた。産業革命近くになると、様々な自動人形・機械人形が登場する。日本でも茶運人形でよく知られる、人間が操らなくてもそのもの自体が動くからくり人形がそれである。
          
 西洋の自動人形Automataは、ぜんまい仕掛けもあれば風力や水力によって動くものもある。16世紀には、自動装置の仕掛けを駆使した大規模な噴水庭園がフィレンツェやアウグスブルクにあったという。そこは、洞窟迷宮になっていて、洞窟の中には水力を利用した巨大な音楽装置があり、機械仕掛けの梟が鳴き、洞窟の迷路を水が流れるたびにオルガンやドランペットだのの響きが湧き上がり扉が開閉し彫像が動き様々の動物が忽然と水面に浮上したりしたそうだ。
 平たく言えば、ディズニーランドのIt's a small worldのような場所か。
 この話を読んだとき私の頭に浮かんだのは、ブラザーズ・クエイの実写&人形映画『ピアノチューナー・オブ・アースクエイクス』で主人公の調律師が仕事を頼まれた、ドロス博士(この名前は1700年代の有名な自動人形製作者からとられている)の製作した7つのオートマタだった。このオートマタも動力が水で、オリジナルな管楽器や人間の声帯をもつ人形などが音楽を奏でる仕掛けになっているのだ。
 このようなAutomata製作者の中には、それを見世物にして商売する者もいた。その仕掛けが珍奇であればあるほど客は寄ってくる。その中にはいかがわしい者も少なくなかった。
          チェスを指すトルコ人形(1769年)
 ↑有名なウィーンの枢密顧問官ウォルフガング・フォン・ケンペレンのチェス指し人形は、トルコ人の人形が正確巧妙にチェスを指す仕掛けになっていて、アメリカで見世物にした際エドガー・アラン・ポオに仕掛けを見破られた。台座の中に人間が入っていたのである。13世紀には「御機嫌よう」と唱える少女人形を持っていたと言う錬金術師もいたという。このくらいのペテンなら可愛いものだ。
 アメリカには国際永久運動発明家協会というものがあるそうだ(現在あるのかは不明)。1812年にフィラデルフィアでレッドホッファーという技師が遂に永久運動装置を完成したと名乗り出た。これでもうあらゆるエネルギーの心配から解放される。市民は熱狂した。しかしどこからともなくペテンだという噂が流れ、レッドホッファーは行方をくらませた。翌年彼はNYへ現れ、例の装置を入場料をとって見世物にした。市民は実用蒸気船の発明者ロバート・フルトンを判定者にして真偽を確かめた。フルトンはほとんど盲目に近かったが機械の音のわずかな不規則なリズムを聞き取り、レッドホッファー立会いの下、機械の両横に掛けてある革製のカヴァーを剥ぐと隠されていた紐があった。紐はカーペットの下に潜り別室のドアの下に通じていた。フルトン達が部屋のドアを開けると、真っ暗な部屋の中で1人の中年男がししどの汗を流しながら歯車装置を漕いでいた。オッサンご苦労!このエピソードはエゴン・ジェイムソンの『奇蹟はこうして作られる』という本に載っているそうである。

 
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