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「女の中にいる他人」再見

2010年03月16日 | ★人生色々な映画
再見。

何度見てもついつい引き込まれてしまう。
成瀬巳喜男作品の中では異色のサスペンスもの。

ごくごくありふれた妻子持ちのサラリーマン
(小林桂樹)が誤って浮気相手を殺してしまう。
何食わぬ顔で優しい妻(新珠三千代)や
子供たちに囲まれた生活を続けるが、
徐々に
良心の呵責に追い詰められていくというストーリー。

こういっちゃなんですが、
色っぽい話とは無縁のような小林桂樹が
身体中からS●Xアピールを発散している若林映子を相手に
マジで浮気というのが逆にリアルだ。

そして殺人の動機がまた似合わなくてビックリ。
これが仲代達矢とかだったら
全然変わったものになるのだろうな。

さりげなく振舞おうとすればするほど
一挙一動があやしくなるさまを小林桂樹が達者な演技で魅せ、
(むっつり顔・シブいお茶を飲んでるようなしかめっ面も良い)
ハラハラさせられる。

新珠三千代がこれまた絶妙なんだわ。

長岡輝子が演じるものわかりのいい姑
(胸元ゆったりのくつろいだ着物の着付けがナイス)、
しっかり者の妻、無邪気な子供たち、
人の良さまるだしのバーのマスター(加東大介)、上司の十朱久雄
小林の友人で浮気相手の夫(三橋達也)、
主人公をはじめ、善人ばかりが登場する。

間にはさまれる
同僚の横領事件もスパイスになっている。
中北千栄子が生活感ある主婦役で出ているが、
出来すぎで思わずクスリと笑ってしまう。

上手い俳優たちのちょっとした言葉や仕草、
目の使い方などで見事にそれぞれの心情が表現されている。

新珠三千代が一瞬にしてハラをくくる場面は
さすがの名演だ。

成瀬作品では男は情けなくて小心で
女は肝が据わっている物語が多いがこれは典型。

しかしまあ
女は子供を守るためには何でもするのが、
ライオン・鳥・猿・人間も含めて生物のサガではある。

応接セットが収まった木造家屋の洋間、
こんな行きつけの店持っていたいなあ
と思わせるこじんまりしたバーなど、
成瀬組ではお馴染み、
中古智による美術がすごく心地良く、
なんとも言えない温かみを感じさせる。

そういえば「ノイローゼ」と言う言葉も久しぶりに聴いた。
今で言うところの「うつ」ですね。
「神経衰弱」って言葉も最近使われなくなりましたね。

しっとり濡れた雨のシーンも多いのが印象に残った。

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