邦画ブラボー

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「怪談・牡丹灯篭」(文学座)

2007年04月17日 | ★恐怖!な映画
杉村春子と長年コンビを組んだ北村和夫おすすめの一作。

山本薩夫監督による傑作映画「怪談・牡丹灯篭」では
小川真由美と西村晃
が演じていた、
亡霊と取引をしようと企てる貧乏人の夫婦を
杉村春子と北村和夫がやっている。
この二人に焦点が合わせられた芝居。

一気に江戸にタイムスリップした。

亭主(北村)は、お化け封じのお札をはがしてやる代わりに
百両持って来いとお化けと掛け合うのだが、
相手が相手だけにびびりまくりながらというのが可笑しい。

脚本(脚色:大西信行)がめっぽう面白い。
映画版西村+小川コンビは
金に目がくらんだ浅ましさが前面に出ていたが、
芝居版での杉村演じる女房は、
亭主を思う女心があふれんばかりで哀れさが際だった。
俗物があぶく銭をつかんだらどうなるか。
北村和夫の至芸もたっぷりと楽しめる。

色と欲。
不思議な因果で絡み合う登場人物たちの
様々な愛の形も感慨深い。
夫婦のその後の運命にもひねりがあった。

杉村VS北村の江戸っ子弁でのやりとりが
一部の隙も無い芸術的な間合いで繰り広げられる。
巧みに笑わせた後しんみりさせたと思えば一転、
はらはらさせられたり、
観客は二人の思うがままに翻弄される。

おまけに、杉村の三役早変わりも味わえる贅沢なエンターテイメント。
女房役からすばやく
北村と取引するお化けに変身するが、身のこなしが気色悪いわ、
台詞に凄みが利いているわで、たいへん怖い。
もう一つの役は、ラストに出てくる上品な奥様。
体つきから仕草、喋り方まで見事三通りに演じ分けております。

不思議な縁に操られる人間たちのあれやこれやは
諸行無常の響きあり。
黙阿弥の芝居を髣髴とさせた。

狂言回しとして、加藤武が扮する原作者三遊亭円朝が前後に登場するのも粋。

これこそ生で観たかったなぁ。

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