邦画ブラボー

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こころ

2007年08月25日 | ★人生色々な映画
学生の日置(安井昌二)は、
ふとしたことで知り合った野淵(森雅之)に強く惹かれ
博学な彼を「先生」と呼んで自宅に頻繁に出入りするようになる。

先生は美しい妻(新珠三千代)と暮らしていたが、
二人の関係にはどこか不自然なものがあった。
「先生」の思想や学問に傾倒する一方で、
仕事へも出ない世捨て人のような生活にも
不可解なものを感じるのだった。

俳優たちの素晴らしく緊迫感ある演技によって
原作の世界が忠実に再現されている。

片時も目を離さずに森雅之の一挙一動を見た。
整った眉毛の間に刻まれた深い皺にも苦悩が表れている。
なんてったって
皺も演技しているので見逃せない。
この年は傑作「浮雲」にも出演しており、
最も油が乗っていたノリノリの頃なのである。

溌剌とした娘時代から憂いを帯びた人妻へと変貌する女を演じた
新珠三千代も見事だった。
画面いっぱいのアップになると
シュールな美貌が際立って恐ろしいほどだ。

安井昌二は『ビルマの竪琴』といい、
市川監督との仕事で最も輝いているように思う。
とまどう学生の心理を巧みに演じている。

明治の学生?にはどうかなと思った三橋達也は、
うーんやっぱりどうかな。
ぎらぎらと光る目からは
何を考えているのかわからないエキセントリックな光が
ほとばしり、
回想シーンで若作りをしている森と堂々と渡りあっているが!

ばっちりきまった構図、俳優の表情を捉えたアップにひきこまれてしまう。
明治時代の街並みや家屋を表した美術も素晴らしい。

「炎上」もそうであったように、観客を
放り出すようなラストの唐突さも市川監督らしい。

終わりを告げる明治と「先生」についても考えさせられる。

おなかいっぱいになったが、
勝手に大きな秘密を打ち明けておいて、
先生ったら
まったく日置と私たちの身にもなってみろ~~!

1955年 市川崑
原作 夏目漱石
脚本 猪俣勝人  長谷部慶次
撮影 伊藤武夫 音楽 芥川也寸志
美術 小池一美

映画の中のいい女:
新珠三千代:クールビューティで演技力は抜群!
しっとりとからみつくような声もたまらない!
市川監督の映画に出ると芸術的な美貌が際立つよう。

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