邦画ブラボー

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「怪談」見たゾォ~~!!

2007年08月22日 | ★恐怖!な映画
真夏の日差しから逃れて
暗い映画館の片隅で江戸情緒に浸る贅沢を味わう。

冒頭、
落語家によって黒木瞳演じる常磐津のお師匠と
愛人新吉(尾上菊之助)の親どおしの因縁話が語られる。

お化け屋敷さながらの沼地に荒れ野。
導入部からわくわくさせてくれるじゃないの。

二人の出会いは偶然ではなかったのである。

馴れ初めは冬の寒い日。
夢のように美しく恐ろしい話が始まる。

話の運びはとんとん拍子だ。
思わず二人の恋物語に引き込まれる。
雨、雪、風鈴、花火、美術も素晴らしく、
江戸の町の空気が伝わってくるようであった。

衣裳は黒澤和子。
格子や大胆な縞、絽の振袖、羽織もの、
帯もよりどりみどりで(締め方も)
着物好きも大いに楽しめる。

立ち居振る舞いがぞっとするほど決まっているのは
歌舞伎役者だから当たり前だけど、
菊之助くんのただならぬ風貌と言おうか
どこか浮世離れした美貌と個性が実にはまっている。

中川信夫の傑作「東海道四谷怪談」が
怪談史上に残る名作と言われ続けるのは
天知茂の類稀な凄い顔(いい意味です!もちろん)があってこそだと思う。
『色悪』とは
そこまでいっちゃってる容貌でなきゃだめだと思う。
そういう意味でキャスティングには大拍手を送りたい。

新吉は、ぬるりと油壺から出てきたような色男で(どんな男だ?)
困ったことに女に大変優しい。
師匠は嫉妬で頭に血が上って稽古に身が入らなくなる。
新吉は元々はヒモ体質ではなかったのに(師匠に壊された?)
金が入るようになってから
どんどん悪いヤツになっていくのが興味深い。
黒木瞳はいつもの綺麗な黒木瞳さんには違いないが
ヒステリーになってからの方が面白かった。
もっと悪役を見せて欲しい女優さんである。

井上真央ちゃんは抱きしめたくなる愛らしさでにじゅうまる。
お色気瀬戸朝香の手下、
どこかでみたことあると思っていたらコメディアンの村上ショージだった。
小悪党が似合っていた。
津川雅彦は貫禄、木村多江は相変わらず上手い。

正統派怪談なれど斬新。
中田監督の怖さのつぼを押さえた演出が心憎い。

お化けもただ出ればいいってもんじゃないということがよくわかる。
幽霊や化け物より、目に見えないもの、怨念、
恐ろしい手紙で呪縛する女の情念そのものが恐ろしいのである。
誰もいるはずがない天井を見つめる菊之助くんの目、悪夢、
何かの「気配」が怖い。

といいつつも、
終盤の大団円を期待してしまうのは怪談好きの悪いサガ。
だがそんな期待を嬉しく裏切ってくれたのが
ラストの立ち回りの盛り上がり方である。

死にもの狂いで何かにとりつかれたように
追っ手と斬りあう菊之助の姿は一度見ただけではもったいないほど見事だ。
歌舞伎を彷彿とさせる凄い芸。
もういっぺん見たい。
亡霊たちの笑い声と拍手が聞こえてきそうな凄惨な殺しの場面だった。

怪談映画を見てやっと夏らしい夏を味わった。

2007年 監督 中田秀夫 脚本 奥寺佐渡子 原作 三遊亭円朝
撮影 林淳一郎

*映画の中のイイおんな:
黒木瞳:歌って踊れてえくぼもある、今最も旬な
大人の女。ほっそりとした体に着物がよく似合う。
親子ほど年が離れた恋人役をやってもちっとも不自然でないところが
すごいわ~~

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