自殺大国日本:日本人の精神的荒廃のもう一つの側面

2008年07月07日 | メンタル・ヘルス

 19世紀イギリスの首相ディズレーリの有名な言葉に、「世の中には3つの嘘がある。一つは嘘、次に大嘘。そして統計である。(There are three kinds of lies: lies, damned lies, and statistics.)というのがあります。

 もう一つ、「政治家と統計は嘘をつく」というのもあるそうです。

 しかし、なるべく事実に基づいた論を立てるには、公的な統計はまず参照しておいたほうがいいと思いますし、ネットで容易に検索できますので、ここのところいろいろ見るようにしています。

 日本人の精神的荒廃に関わる、もう一つの大きなテーマは「自殺」でしょう。

 厚生労働省の「自殺総合対策会議(第2回)」(平成19年4月)の「参考資料
の中に「我が国の自殺の概要」という項目がありました。

 それによると、平成10年に3万人を超えてから、13、4年に2万9千人台になってはいますが、以後ずっと3万人を超えるという状態が続いています。

 驚きとやはりという気がしたのは、世界の諸国との比較です。

 WHOの資料によれば、自殺率(人口10万人あたり)は23.8で世界第10位(1位からあげると、リトアニア、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、スロベニア、ハンガリー、エストニア、ウクライナ、ラトビア、そして日本)です(自殺数では、中国、インド、ロシア、米国についで第5位になっています)。

 1位から9位までの国は、政治・経済の混乱が大きな原因になっていると推測-了解ができます。

 しかし、経済大国(だった?)はずの日本で、なぜこんなにも自殺率が高いのでしょう。

 厚生労働省平成14年の報告では、G8諸国の自殺による死亡率(2000年時)では、ロシアについで第2位(以下、フランス、ドイツ、カナダ、アメリカ、イギリス、イタリア)です。

 これは、単なる経済的原因(不況等)だけでは説明できないように思います。

 もう一つ、「社会実情データ図録」というサイトがあって、時々利用しています(信用度についてはよくわかりませんが)。

 そこに「景気、失業者数、自殺者数の変動幅の推移」という記事がありました。

 その記事にこうあります。

 「自殺者数については、70年代までは景気や失業との相関は余り見られなかった。ところが、1980年代前半の不況の際には、失業の増加から更に1年遅れで自殺者が増加した。それ以降、自殺者と景気はおおまかには相関している様子がうがかえる。(もっとも90年代前半のバブル後不況については、失業者の動きとは異なって反応度が高いかたちで追従することはなかった。98年の自殺者急増はこのことの反動のようにも見える。)」

 私が注目したいのは、「自殺者数については、70年代までは景気や失業との相関は余り見られなかった。」というところです。

 つまりそれは、当たり前といえば当たり前なのですが、経済的理由だけでは――つまり景気が悪くても失業しても――生きる理由・希望・意味がわかっていれば、人間は簡単には死なない、ということです。

 もう一度、「我が国の自殺の概要」で確かめてみると、戦後のもっとも厳しい時代、昭和22年から28年まで自殺者は1万人台だったのです。

 現代日本では、生活が苦しくても生き抜く理由がわからなくなっっている、つまりニヒリズムが浸透してきた、精神性の荒廃が進んでいる、という私の解釈は、改めてこうした統計に照らしても妥当なのではないかと考えているところです。

 あと、自殺率が上がっているのは圧倒的に中高年男性(戦後一貫して女性の率はあまり上がっていない)だというところに、男性の一員としてなんともいえない悲しさを感じます(ほんとうに「男はつらいよ」ですね)。


*この他、「いじめ」、「高齢者虐待」、「孤独死」などについても、統計資料を参照しながら考えてみたいと思っています(すぐにはできないかもしれませんが)。



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