Sightsong

自縄自縛日記

宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』

2010-08-28 02:35:53 | 沖縄

那覇空港の売店には、いつも、ひるぎ社の「おきなわ文庫」がいくつも置いてある。家族で沖縄を訪れた帰り、機内で読もうと何冊か入手した(いつも、その名の通り、ヒルギの写真をあしらった紙のカバーを付けてくれる)。宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(1998年)はそのひとつだ。韓国に赴任したウチナーンチュの著者が、韓国の歴史や文化、沖縄との関係などについて雑感風に綴っている。羽田からのバスの車内で読み終えてしまった。

琉球は、琉球王国成立前の1389年から1500年まで、朝鮮と頻繁に交流していた。朝鮮もその間に、高麗から李氏朝鮮へと変わった(1392年)。さらにその前、1372年には、琉球はからの招聘にはじめて応じ、冊封・朝貢関係を結んでいた。本書で紹介してあるのは、その時代のエピソードである。

なかでも面白いのは、胡椒と唐辛子を巡る話だ。中世の交易にスパイスは付き物であり、琉球もその例外ではない。4世紀に朝鮮に伝わった仏教は肉食を禁じていたが、1231年から1世紀朝鮮を支配した元は肉食文化であり、さらに李氏朝鮮は儒教を国教とし、肉食が進んだ。そのために胡椒の輸入が必要だったが、1592年、豊臣秀吉の朝鮮侵略により、それが叶わなくなる。同年、ポルトガル人が日本に唐辛子を持ち込み、それは侵略とともに朝鮮にも伝わっていく。胡椒の代替品から食文化の中心へ―――ということは、秀吉がキムチの歴史の始点であったということか? 調べてみると、琉球には、朝鮮経由(または日本経由)で唐辛子が伝わったようであり、泡盛に唐辛子を漬けたコーレーグス「高麗薬」と書く。

韓国と沖縄、ともにかつて中国と冊封関係を結び、方や独立しながらも国を二分され、方や米国と日本にコマのように位置づけられてきた。その両者の共通点を気質や食文化や歴史から見出す本書には、通常とは違った視点を持つものとして、好感を覚えた。韓国のなかでの済州島と、日本のなかでの沖縄とは、差別構造という側面から比較されることが少なくないが、本書の著者は、出身地を韓国で訊かれると、「済州南道」(済州島の南という意味)と答えている。妙に淡々とした面白さがある。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。