Sightsong

自縄自縛日記

仲里効『悲しき亜言語帯』

2013-09-29 00:06:46 | 沖縄

仲里効『悲しき亜言語帯 沖縄・交差する植民地主義』(未来社、2012年)を読む。

沖縄口、ウチナーグチ。この言語は、国家の国家としての欲望によって、抑圧され、変貌させられてきた。

一方向の権力によってのみではない。著者が示すように、1903年の「人類館事件」をもとにした知念正真の戯曲『人類館』において戯画的に描かれた、沖縄内での権力転換。また、戦後の沖縄教育界における、過剰なまでの「方言」蔑視と「共通語」獲得に向けた圧力。すなわち、滅ぼす者と滅ぼされる者が存在するといった単純な図式ではなく、その関係の中には生政治が創出され、擬制という形があった。

本書が沖縄文学をもとに説いてみせるのは、そのような言語間の関係、さらには闘争のなかで、自ら表現し、発語する言語を創りだしていこうとした模索の姿である。また、祖国を追われ、在日コリアンとしての詩を記してきた金時鐘の存在も、そこに重ね合わせている。

山之口貘、川満信一、中里友豪、高良勉、目取真俊、東峰夫らの文学活動についてもそれぞれ興味深いが、なかでも面白く読んだのは、崎山多美の作品世界についての分析だった。

日本語とウチナーグチとの狭間、また沖縄内でも本島と先島との狭間、そのような領域において、崎山多美は「違和感、屈辱感、しらじらしさ、ぎこちなさ、空虚さ」を覚え、そこでの揺らぎの中で「声」を出し聴くという脅迫感に近いイメージを言語化する。著者は、そのことを、「所属を決定されることを拒まれ、意味に還元されない、それそのものの力を生きる<声>のマチエール」だとする。崎山多美の作品を読んで覚える、内奥から衝き動かされるような感覚のことを表現してもらったようだ。

●参照
仲里効『フォトネシア』
仲里効『オキナワ、イメージの縁』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
山之口貘のドキュメンタリー
山之口獏の石碑
川満信一『沖縄発―復帰運動から40年』
川満信一『カオスの貌』
高良勉『魂振り』
崎山多美『ムイアニ由来記』、『コトバの生まれる場所』
崎山多美『月や、あらん』
大隈講堂での『人類館』
『沖縄の十八歳』(1966年)、『一幕一場・沖縄人類館』(1978年)、『戦世の六月・「沖縄の十八歳」は今』(1983年)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。