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自縄自縛日記

済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編

2013-02-10 08:59:17 | 韓国・朝鮮

「済州島四・三事件65周年記念連続学習会」の第2回として行われた、「済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編」に足を運んだ(2013/2/9、文京区民センター)。

済州島四・三事件とは、1948年、南北朝鮮の分断に反対した済州島民の蜂起に対し、米国の指示により、韓国警察等が行った島民虐殺事件(白色テロ)である。いま、その済州島の江汀(カンジョン)という村に、海軍基地が作られようとしている。

会場はかなりの人で埋まっていた。100人くらいは来ていたのではないか。在日コリアンの小説家・金石範さんも来場していたとのことだ。

李�促京(リ・リョンギョン、立教大学非常勤講師)さんが、カンジョンの問題を具体的に説明した。

カンジョン村は済州島南部にある小さな村であり、さまざまな絶滅危惧種が棲息する世界自然遺産でもある。

ここに、韓国の海軍基地を建設する話が突然あらわれ(当初は、リゾート地を装っての工作であった)、法的・社会的に異常な手続きであったにも関わらず、2007年にわずか1ヶ月だけで決められてしまった。やがて、海軍と政府関係者のみで工事を強行しはじめ(2010年)、反対者は検察・裁判所に無差別的に罰金を課せられた。地域は分断され、反対派と賛成派は口もきかず、使うコンビニまで別々という状態になっている。

韓国政府は、この海軍基地を、北朝鮮の挑発を抑制し、海上交通路を保護し、機動戦団を収容するのだとしている。しかし、済州島は北朝鮮からもっとも遠く、もとより海上交通を海軍基地が保護するなどという理屈は奇妙で、かつ、調べてみると、機動戦団向けではない基地だという。

つまるところ、これは米国の軍事戦略に沿った基地建設なのだった。既に済州島では海軍のみならず空軍も基地建設を進めている。沖縄と同様、日本軍が「本土死守」のため駐屯していた地であり、戦後も、米国は戦略拠点として重視している。やはり日米安保条約と同様に、韓米相互防衛条約がある。米国は近年東アジア回帰しており、日米韓含めての情勢とみるべきである。

盧武鉉政権では、済州島の「四・三事件」を認めて謝罪し(2003年)、「平和の島」に指定した(2005年)。しかし、李明博政権では一転保守化が進み、朴槿恵大統領も選挙の際に「中断なき海軍基地建設」を公約している。李明博のような強引かつ暴力的な方法はもはや難しい、ならば、新たな「国民統合」の手法とは何か。

そのための上からの動きとして、「基地反対」は「従北」(北朝鮮に従うこと)であり、国の安全保障を妨げるものであり、「四・三事件」は「左派」であるというストーリーを刷りこもうとしている。かつて韓国において「アカ」とみなされることが即「死」を意味するものだったことを考えれば、これは歴史回帰に他ならない。

このことは、日本でもまったく同様なのではないか。沖縄の辺野古や普天間や高江での国家権力の剥き出しの暴力は、ほとんど国民の視線に晒されることはない。東京でのデモにおいても、同じような排外主義的な動きがある。

大メディア(朝鮮日報、中央日報、東亜日報など)も政権の方針に従って論調を変化させている。勿論、済州島という「辺境」の地における暴力事件など報道もされない。「四・三事件」さえ、韓国ではあまり知られているとは言えない。そのため、報道の自由を求めて立ち上げられた新メディアが、「ニュース打破」であり、「ハンギョレ新聞」であった。

―と。

会場では、ゲストとして、東京で働くテキスタイルデザイナーの金志修(キム・ジス)さんも、そこに視線を向けた者としての報告をされた。

まさに、日本や沖縄における状況の相似形だ。保守政治に回帰し、上からの弾圧や排外主義はかつて以上に進められ、大メディアは権力追従以外の役目を果たすことはなく、米国軍事戦略の影が全体に覆いかぶさっている。

○「ニュース打破」の映像 >> リンク

●参照
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『新編「在日」の思想』
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』(詩人は、四・三事件に関わり、大阪に来た)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(鶴橋のコリアンタウン形成史)
鶴橋でホルモン 
野村進『コリアン世界の旅』(済州島と差別)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
知念ウシ・與儀秀武・後田多敦・桃原一彦『闘争する境界』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
『けーし風』沖縄戦教育特集(金東柱による済州島のルポ)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」(李静和は済州島出身)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(練塀のルーツは済州島にある)


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