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自縄自縛日記

文京洙『新・韓国現代史』

2016-03-24 22:47:38 | 韓国・朝鮮

文京洙『新・韓国現代史』(岩波新書、2015年)を読む。

とてもよくまとまった通史である。示唆に富む箇所も少なくない。

例えば。
●徳川政権の日本は朝鮮を一段下の存在と見なしていた(通信国として)。その一方で、朝鮮も日本を一段下の存在とみなしていた(小中華思想的に、辺境として)。(もちろんこれは、「どっちもどっち」と雑に客観視すべきということではない。)
●朝鮮戦争(1950年~)は、済州島での虐殺(四・三事件、1948年)を朝鮮半島全域において再現する形であった。これは「アカ」を無条件に殺してもよい敵だとする刷り込みとして、韓国において長く残った。もちろん、それにはアメリカが深く関与している。
●朴正熙政権下での経済成長は、韓国社会への影響をまったく考慮せずに、純粋に「経済合理性」の見地から進められた結果だった。つまり、実験場であった(世界銀行、新古典派)。
●日本の歴史認識の甘さが、常に、日韓の関係構築を阻害してきた。(つまり、バックラッシュ以降のことなどではない。)
●地域感情の差が、常に、韓国の政治において利用されてきた。特に全羅道(韓国南西部)は激しい差別の対象となってきた。この構造は、いまの選挙においても変わらない。金大中は全羅道出身であり、また、光州事件(1980年)以降、リベラルが強い地域ともなっている。
●廬武鉉を大統領に押し上げた市民ネット社会の力は大きかったが、一方で、移り気で読めないものでもあった。ポスト廬の保守政権(李明博、朴槿恵)の誕生を押しとどめることができない結果にもなった。
●歴史認識の逆流は、2000年代の半ばに「ニューライト」として現れた。これは日本の「歴史修正主義」から10年遅れでやってきた現象であり、言葉も、「自虐史観」など日本からの借り物であることが少なくない。
●李明博政権の失政のひとつに、韓国四大河川の開発があった(川で遊ぶ、川を守る~日本と韓国の水辺環境)。この結果、地方の中小建設業者の受注率は計画の4割に過ぎず、景気浮揚も経済活性化も認められなかった。潤ったのは大手の建設会社のみであった。(どこかで聞いたような話である。)

「解放」後の韓国の歩みと日韓関係とを俯瞰することができる良書である。

●参照
文京洙『済州島四・三事件』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
大西裕『先進国・韓国の憂鬱』
金浩鎮『韓国歴代大統領とリーダーシップ』
コバウおじさん
T・K生『韓国からの通信』、川本博康『今こそ自由を!金大中氏らを救おう』
金芝河のレコード『詩と唄と言葉』
四方田犬彦『ソウルの風景』
和田春樹『北朝鮮現代史』
服部龍二『外交ドキュメント 歴史認識』
波多野澄雄『国家と歴史』
高橋哲哉『記憶のエチカ』
高橋哲哉『戦後責任論』
外村大『朝鮮人強制連行』


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