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自縄自縛日記

呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式

2019-09-08 09:19:01 | 韓国・朝鮮

1923年の関東大震災直後、多くの朝鮮人や中国人がデマに扇動された民間人によって虐殺された。かれらが殺された場所のひとつである荒川河川敷では、毎年追悼集会が開かれている。今回はじめて足を運んだ(2019/9/7)。

集会に先立って、呉充功『隠された爪跡』(1983年)の上映があった。

映画に出てくるアボジは、震災の直前に植民地朝鮮から仕事を求めて渡ってきており、虐殺事件を目の当たりにした。もとより朝鮮では、コメ不足の日本に送るための朝鮮米を増産させ、農民をさらに貧窮に追いやった。日本に来た多くの労働者たちにとって、自由渡航とはいえ、それは積極的な選択による自己責任を伴う自由などではなかった。東京のここ墨田区でも、亀戸や向島では工場労働者の需要があった(それが亀戸事件にもつながっている)。

映画で示される当時の状況は、悪い冗談のように現在に重なってくる。上からのデマ、植民地主義のために在日コリアンを「不逞」扱いしていた官吏、虐殺への直接的・間接的な関与、市民が率先してのヘイトと行動、後日の隠蔽工作。荒川河川敷では犠牲者の遺骨を掘り起こす作業がとらえられているが、実は、遺骨はその前に既に軍によって別の場所に遺棄されていたのだった。

エンドロールには地域別の犠牲者がリストアップされる。わたしの自宅の近くでも3人。時間も土地もすべてつながっている。

(ところで、荒川を撮った場面では、2回、板橋文夫「グッドバイ」が流された。これが収録された『渡良瀬』は映画製作前年の1982年である。)

映画の上映後、河川敷まで歩いて移動。件当時の四ツ木橋は既に撤去されている。追悼式の会場はそれがあった場所の少し下流にある木根川橋の下である。また旧四ツ木橋の少し上流には新四ツ木橋がある。平和運動の大木晴子さんとも久しぶりにお会いできて、いろいろお話をした。

ここで、李政美さんが歌い、竹田裕美子さん(アコーディオン)、矢野敏弘さん(ギター)、Swing MASAさん(アルトサックス)が伴奏した。ぢょんみさんの歌声は透き通るようで濡れた情がある。彼女の名曲「京成線」では、「低い鉄橋の/その下には/埋もれたままの/悲しみ眠る」と歌われている。

MASAさんの地を踏みしめるブルースも素晴らしい。MASAさんを東京で観る機会はさほど多くないが(あとで話すと、呼ばれればね、と)、もっと多くの人に体感して欲しい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●関東大震災
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)

●李政美
板橋文夫+李政美@どぅたっち(2012年)
李政美『わたしはうたう』(1997年)

●Swing MASA
山谷夏祭り(ジンタらムータ、Swing MASA、中川五郎)(2017年)
Swing MASA 爆音JAZZ(JazzTokyo)
(2016年)


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