坂本高雄さんが山梨の民家について調査を始めたのは昭和30年(1955年)のこと。そして坂本さんがその研究の成果をまとめた『山梨の民家』を出版されたのが昭和50年(1975年)のことでした。坂本さんは、そのあとがきで、以下のように記されています。「わたくしが調査に手を染めたのは昭和30年でしたが、その頃からみてもこんなに急速なテンポで民家が消失してしまうことはまったく想像もつかなかったことです。勤務のない休日を利用して県下全域を廻っているうちに、二十年近くになってしまいました。」昭和30年代から20年間ほどのうちに、山梨県下においても伝統的形式の民家が驚くほどの勢いで姿を消していったことが、この坂本さんの感慨からも察することができます。そして同書には、「南都留郡足和田村根場」についても「甲(かぶと)造り」の茅葺き民家の集落として触れられており、しかし、昭和41年9月25日の台風26号の集中豪雨による土石流によって、「30余戸のうち4戸を残して瞬時に亡失」してしまったことが記されていました。 . . . 本文を読む