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どんでん返しがスゴい!『異邦の騎士』by島田荘司

2020年06月03日 | 小説レビュー

『異邦の騎士』by島田荘司

 

~失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。「BOOK」データベースより

 

島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」、「島田荘司推理小説賞」など、賞の名前になるほどの推理・ミステリー小説の大家であり、アジア圏では『推理之神(GOD OF MYSTERY)』とも呼ばれている島田荘司氏ですが、恥ずかしながら島田氏の作品は初めて読みました

ストーリーですが、ある昼下がりの午後、一人の青年が小さな公園のベンチで目覚めます「俺はこんなところで何をしているんだ?」と、眠り込む前の記憶が全くない青年、その直後から事件に巻き込まれていき・・・。 この青年はいったい何者?なぜ記憶がないのか?偶然出会って恋に落ちた女性は何者なのか?という、まぁどっかで観たことや聞いたことのあるような物語の出だしでした。

この青年が自分の記憶を取り戻すために奮闘する中で、奇妙な友人・御手洗潔のアドバイスや、とても素敵な女性・良子との穏やかなで愛のある新しい生活が始まります。

しかし、本人にとっての至上命題は「自分が何者なのか?」ということで、穏やかな生活を守りたいがために、過去を追及していこうとします。

しかし、徐々に明らかになる自分の過去、衝撃の事実! 謎の手紙、日記、復讐、殺人・・・、と、中盤から予想もしない激しい展開になり、ページを捲る手が止まりません!

そして、クライマックスの謎解きというか、危機回避が叶い、ホッとするのも束の間、最後には悲しい別れと爽やかなエンディングが待っています。

 

島田荘司氏が作家を目指したのは30歳の頃で、初めて書いたのが、この作品だったんですが、当時は「この程度では、世に出すに値しないし、タイトルも『良子の思い出』というパッとしない感じだから・・・。」と、机の引き出しにしまったままにしておいたんですって。

そして、33歳の頃に、大ベストセラーとなった『占星術殺人事件』で華々しくデビューするんですね。

その後も、コンスタントにミステリー作品を世に出し続け、出版社からの要請も相次ぐ中で、ネタが尽きかけた頃、「そうだ!あれがあった!」と、机の引き出しから引っ張り出してきて、加筆修正し、タイトルを付け直して発表されたの『異邦の騎士』だったんですって。面白いですね。

「東西ミステリーベスト100」というのをご存知でしょうか?1985年に『週刊文春』で実施され、推理小説のオールタイムベスト選定企画で、推理作家や推理小説の愛好者ら約500名

(日本推理作家協会:123名、日本冒険小説協会:123名、各大学のミステリ同好会:56名、SRの会:142名、怪の会:21名、各界のミステリ通:43名が、それぞれ順位をつけてベスト10を選んでもらい、1位が10点、2位9点、3位8点、……10位1点という方式で集計している。)

が、アンケートに回答し、結果は『週刊文春』1985年8月29日号および9月5日号で発表され、1986年12月には文藝春秋編『東西ミステリーベスト100』として文春文庫より刊行された。そして、2012年、『週刊文春』2013年1月4日臨時増刊号として、リニューアル版が27年ぶりに発表された。

というものです。

第一回から30年以上の時を経ても、不動の1位は、横溝正史『獄門島』(1947)、第2位は、中井英夫『虚無への供物』(1964)なんですよね。どちらも未読なので読んでみたいですね。

3位には、島田荘司『占星術殺人事件』が入り、4位以下には、僕が読んだことがある作品の、『火車』、『十角館の殺人』、『戻り川心中』、『容疑者Xの献身』、『生ける屍の死』、『白夜行』、『不連続殺人事件』、『双頭の悪魔』、『砂の器』、『私が殺した少女』、『葉桜の季節に君を想うということ』、『模倣犯』、『不夜城』、『第三の時効』、『マークスの山』、『半落ち』、『異邦の騎士』、『理由』、『奪取』、『首無の如き祟るもの』、『すべてがFになる』、『黒い家』、『七回死んだ男』、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『イニシエーション・ラブ』、『殺戮にいたる病』、『ガダラの豚』、『ハサミ男』、『慟哭』、『ジェノサイド』、『99%の誘拐』と、掲載されています。

100作品のうち、約1/3となる33作品は読んでいますが、僕の中で評価の高いものもあれば、低いものも沢山ありますね

さて、本作の評価ですが、途中までは本当に面白く、クライマックスも緊迫感があり、とても楽しめました。最後は悲しい出来事も起こりますが、前を向いて歩いていこうとする主人公にエールを送りたくなりました。

また、チック・コリアなるピアニストや、昔の音楽も沢山出てくるので、youtubeで聴きながら読むと、色々と実感が沸いてきて、さらにストーリーに深みが増しますね。筆者のあとがきも興味深いです。

次には『占星術殺人事件』を読んでみますかね。

★★★☆3.5です。


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