「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

じんわりと温かい『沈黙のひと』by小池真理子

2019年01月17日 | 小説レビュー
『沈黙のひと』by小池真理子

~両親の離婚によってほとんど関わりあうことなく生きてきた父が、難病を患った末に亡くなった。
衿子は遺品のワープロを持ち帰るが、そこには口を利くこともできなくなっていた父の心の叫び―
後妻家族との相克、衿子へのあふれる想い、そして秘めたる恋が綴られていた。
吉川英治文学賞受賞、魂を揺さぶる傑作。「BOOK」データベースより


大好きな小池真理子さんの作品で、さらに吉川英治文学賞受賞作品とのことで、否が応でも期待せずにはいられません!

と意気込んで読み出したものの、なかなか読み手が進みません(^_^;)
何となくリズムがわるいというか、乗れないというか・・・。

「これはもしかしたら駄・・・」と思い始めた中盤あたりから、一気に物語に引き込まれました( ´∀`)

やっぱり小池さんの文章は細部に至るまで美しいですよね。

いつもは恋愛ものなんですが、今回は不倫の末に妻と娘を残して新しい女のもとへ去っていった父と娘の物語です。

どうしようもない父親なんですが、小池さんが描くと美しい父娘愛に溢れた作品になってしまうんでから不思議ですよね。

パーキンソン病を患ってしまい、身体の自由も言葉を話すことも出来なくなった父が、最期には脳梗塞で還らぬ人となってしまいます。

その父親が残した古いワープロの中に残された数々の文書の中から、母娘を置き去りにしていった父の日常が明らかになっていきます。

父が愛した短歌の数々が出てくるのですが、この短歌が素晴らしい!

巻末の解説で明らかになるのですが、この短歌こそ、小池真理子さんの実父が実際に詠んだ短歌であることがわかると、なおのこと深みが増しました。

小池さんの文章が美しいのも遺伝なんかな?と思ってしまいます。

それほど盛り上がる展開がある訳ではないのですが、読んでいて心がジーンと温かくなる作品です。

★★★3つです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする