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生きていく意味とは?『ロストデイズ』by大崎善生

2019年01月12日 | 小説レビュー
『ロストデイズ』by大崎善生

~30半ばで娘を授かった西岡順一は、子供の誕生の喜びとは裏腹に、妻との関係がこのまま在り続けるのか不安を抱く。
妻との距離をつかめなくなった矢先、意に沿わぬ人事異動の命が。
アルコールに逃げる順一を、しかし、妻・由里子は静かに見守るだけだった。
そんなある日、大学時代の恩師で娘の名付け親でもある大島危篤の報が。
二人は急遽、教授夫妻の住むニースへ旅立った。夫人の勧めで二人はさらにジェノヴァへと向かう。
旅の中で二人がたどり着いたものとは?自分たちは人生の頂に近づいているのか、頂を過ぎこれからは下っていくのか?切なく胸に染み入る至高の恋愛小説。「BOOK」データベースより


「愛に飽和点はあるのだろうか」と帯に書いてあるんですが、少し考えさせられますよね。

愛の飽和点、愛の飽和状態・・・、判るような気がしますね。

あらためて「飽和」について調べると、
①最大限度まで満たすこと。また、最大限度まで満たされていること。 「大都市の人口は-状態に達している」
②ある条件下で、一定量に達すると外部から増大させる要因が働いても、それ以上には増えない状態。
とあります。

さて、僕にとっては当たり外れの大きい「大崎善生氏」の作品ですが、今回の『ロストデイ』も、どちらかといえばハズレの部類に入るでしょうね。

結婚することによって、長い人生を共に歩むパートナー(妻もしくは夫)とは、登山をしていくようなものであると文中で例えています。

まさにその通りだと思いますね。

頂上を目指す二人はザイルでしっかりと繋がって、時に夫が前に出たり、妻が引っ張ったりと、互いに支えあいながら登っていくものだと思います。

この作中の順一は、良く悩み考える男で、「そんなに考えなアカンか?」と問いたくなります。

一方で、妻の由里子は淡々と毎日を過ごしているように写ります。

「きっと、大崎善生氏のことやから、後半に何か起こるで!?」と期待しながら読みましたが、最後まで、なぁ~んにも起こりません。

順一に感情移入できない分、もう少し、由里子目線の描写があれば、何か読み手に訴えるものがあったかも知れませんね。

何かに向かって登っているうちは目指すべき頂があり、二人の絆もガッチリと繋がっているように思いますが、結婚から10年が経ち、20年が経ち、子どもが成人し、そして二人は老いていくという過程に差し掛かったとき、まさに人生という山の下り坂を下りていくとき、二人の目標は?絆は?どこに求めていくのでしょうか?

最後に恩師が「生きていくことに意味なんて君の中になくていいんだよ・・・。君が見つけられなくても、君の妻や子どもが生きていく意味を見つけたのなら、それが君の生きる意味だ」的なことを言われます。

「生きる意味・・・、自分が生きている意味かぁ・・・。」

毎日を生き抜くモチベーションとなるものなんて、そんなに見つけられている人なんていないでしょう?

何となく仕事して、何となく家に帰って、何となくテレビ観て、何となく本を読んだり、ネットをしたり、そして時間がきたらお風呂に入って、そのまま布団に入って・・・。 朝はいつもの時間に目覚めて・・・、ごはんを食べて着替えたら出勤して・・・という惰性ループでしょう?

その中で、色んな細かい良い事や悪いことは起こりますし、決して単調ではないんですが、「自分の生きる意味」について考えることなんてないし、必要ないと思います。

確かに小さくとも目標を持って人生を生きていくことは理想の姿でありますし、大切なことです。

しかし、課題や連絡等を先送りすることなく、一日一日をしっかり終えることの積み重ねが、人生の成功に繋がっていくと思いますので、日々頑張って過ごして生きたいと思います。

作品の評価としては、 ★★☆2.5です。
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