クオリティ高しっ！「クロスファイア上・下」by宮部みゆき

～青木淳子は常人にはない力を持って生まれた。念じるだけですべてを燃やす念力放火能力―。
ある夜、瀕死の男性を“始末”しようとしている若者四人を目撃した淳子は、瞬時に三人を焼殺する。
しかし一人は逃走。淳子は息絶えた男性に誓う。「必ず、仇はとってあげるからね」正義とは何か!?裁きとは何か!?哀しき「スーパーヒロイン」の死闘を圧倒的筆致で描く。「BOOK」データベースより


「クロスファイア(十字砲火)」と、まぁ絶妙なタイトルをつけたものです(^_^;)

主人公・青木淳子を中心に、様々な背景を持った登場人物が縦横斜めから交差していきます。もちろん「炎」が度々登場します。

しかし、決して散文的にならず、それぞれに意味を持たせ、「正義とは？」、「罪と罰」などをそれぞれの立場で語らせることによって、読者にも色々なことを考えさせられます。

さて、肝心のストーリー展開ですが、最初から最後まで、心地よい緊張感に包まれたまま、スラスラと読み進めていけます。

注)以降はネタバレの危険あり

物語はクライマックスに差し掛かり「さぁ、これから大騒動やで！」と、意気込んできたところで、「あれっ？あとこんだけしかページがないのに、どうやって終わらせんのよ！」と、思っていたら・・・、衝撃のエンディングを迎えます。

でも、「はぁっΣ(´□｀;)！？なんじゃそりゃ！？」的な終わり方ではなく、大変丁寧に、読者に語りかけるように納得させてくれます。宮部さんの思いやりに触れたような気持ちになります。

読みながら僕は、「浩一に出会ったことによって、淳子の能力に化学反応が起きて、能力を無くしてしまい、普通の人間として生きていく」というエンディングを想像したりもしました。

が、結果として、とても寂しく悲しい結末を迎える訳ですが、何故か読後には、「ホッ」としたような安堵感を得ました。
惜しむらくは、「かおりと淳子のからみを見てみたかった」というのが正直な感想です。

しかしながら、すごく完成度の高い、素晴らしい作品だと思います。心を揺さぶられる快作だと思いますよ！

★★★★４つです！