「座右の銘」森村誠一著より。
いかにも作家自らの言葉だと思える。森村氏の経験が述べられていた。かつて、証明シリーズ、十字架シリーズ、『悪魔の飽食』等の作品を書いたものがすべてベストセラーになっていた。
これは異常な経験だと語っている。ところが、現在はオリジナル新刊、新書、文庫等を合わせて年間40~50冊ほど出版しているが、全冊合わせても当時の1冊の発行部数に及ばないという。
森村氏は作品が読者に支持されたというより、一種の社会現象のような感じだったと振り返っている。確かに当時はマスコミにも頻繁に取り上げられ、宣伝効果もすごかったとも思える。
さらに森村氏はデビュー前のことも振り返っていた。作品の山を築いても発表の舞台もなかったのだ。どんな傑作を書いたと本人が自負しても、読者がいなければ何の価値もないと感じていた。
ここでの座右の銘は「ボクサーは連戦連勝している間に弱くなる」というモハメッド・アリの言葉だった。作家も同じだと実感したようだ。うまくいっている間に、初めのようなハングリーな気持ちはいつしか失われてしまうのかもしれないな。
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