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化学染料には出せない日本の伝統的な色がある。

2007年12月13日 | Weblog
「日本の色を歩く」吉岡幸雄著より。

筆者は40代を過ぎてから家業である植物染屋を継いでいた。それまでは美術工芸や染織関係の書籍の編集や広告の仕事に携わっている。そのため、全国各地に植物を求め取材した際の豊富な知識と家業を継承したあとの実践により味わい深い旅のエッセイとなっていた。言葉を換えれば客観と主観がほどよくバランスがとれていて心地よい読後感であった。

それにしても日本の伝統的な色は実に豊富で微妙に出来上がっている。それは日本人がそれだけ感覚的に優れているということにも思えた次第。手先が器用であることとどこか共通していそうだ。現代では化学染料を使って簡単に色を染めることができる。しかし、古い時代にじっくり時間をかけて植物から染めた色彩には本物の色の強ささえ感じられてくる。

「赤の色を歩く」という章では、800年近く歳月がたった鎧兜の例があった。年数がたったため損傷が激しかったようだ。そして今から100年ほど前の明治36年(1903年)に修復がほどこされていた。しかし、一世紀を経た今では、補修された部分(布地)は退色して淡くなってしまい「茜色」というより珊瑚色になってしまっている。

ところが平安時代に染められた茜色はいまもなお染め上げられたばかりと思えるほどの彩りをたたえていたのだ。(そのカラー写真も掲載されていた)自然の植物から創意工夫、苦労の末染色されたいにしえの工人の技術には驚かされる。また、こんなところにも本物はうそをつかないものだと感じてしまう。


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