かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

丸一国府商店/旧丸一商店(愛知県瀬戸市)

2015-02-01 | 尾張の近代建築

 名鉄尾張瀬戸駅の東、瀬戸川に架かる窯神橋のたもとに、天守閣のような望楼がひときわ目を引く近代和風建築があります。この建物は明治5年創業の瀬戸でも老舗の陶器店で、瀬戸電が堀川まで延長された明治44年に丸一商店の陶器部として建てられたものです。元々丸一商店は、明治4年の廃藩置県で失業した犬山藩の武士たちが、藩主から家臣救済のため貸与された資金で起業したのが始まりで、丸一の屋号も犬山藩主成瀬家の家紋に因んだものです。いわゆる「武家の商法」というやつですが、陶器販売のほか印刷業などいくつかの事業を手がけ、なんと6年後には主君に全額返済したというのですから大したものです。

 建物全体は2階建の町屋建築に望楼を載せた形で、犬山城の天守を模したものと伝えらています。平成15年の道路拡張工事にともない、保存のため曳家、改修が行われ、1階は耐震壁などの補強が施され旧状をとどめませんが、2階以上は創建当初の外観を復元保存しています。


■外観南面~向かって左の白い土蔵造りの建物は店舗増築部分



■店舗の1階は改変が大きいが2階より上は旧状を保つ
 曳家改修時に古写真をもとに創建当初に近い外観に改修され、2階窓前面にも格子が復元された



■4階部分の望楼~東面の鉄製の手摺は創建当初のもの
 望楼の正面に大きく書かれたマルイチのマークに、創業者の犬山藩士たちの思いが伝わります



■平成13年訪問時の外観~この外観が瀬戸の往時をしのぶランドマークとして保存されたのはなによりです


◆丸一国府商(旧丸一商店)/愛知県瀬戸市榮町41
 竣工:明治44年(1914)
 構造:木造2階建一部4階建
 撮影:2015/01/25