かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

JR東海中央本線 武並駅(岐阜県恵那市)

2011-09-23 | 失われた建物の記憶

釜戸駅の健在を確認後、一駅先の武並駅に向かいます。
19号線を右折し坂を下りると、目の前に現れたのはコンテナのような長方形の箱で、以前の木造駅舎は影も形もありません。

以前の駅舎は玄関の上に小さな半円形のドーマー窓を設けた大正期の洋館風で、まさに「ふるさとの木造駅舎」のイメージがぴったりの味のある駅舎でした。
大正15開業の駅舎は、地元の人にとっては生まれた時からそこにある「あたりまえの風景」として存在していました。長い歴史のある建物は、その存在自体が町の歴史そのものであり、その時代を生きた人々の思いを受け継いでいます。
80年以上もの長い間、町とともに時を過してきた駅舎が建て替えられたのはとても残念な思いがします。

新しい駅舎は現代風のモダンな建物で、それ自体が決して悪いわけではありません。
ただ私的にはもし私がこの町で生まれ育った人間で、久しぶりに故郷に帰ってきた時に迎えてくれるのは、ずっと昔から変わらずそこにあるあの木造駅舎であって欲しいと思うのです。
現在の駅舎が80年後に人々の思いを受け継ぎ、町の歴史を語る建物として存在するのを願うばかりです。

◆JR東海中央本線 武並駅/岐阜県恵那市武並町竹折
 竣工:大正15年(1926)
 構造:木造平屋
 ※2008年取り壊し


 
◆屋根のドーマー窓が特徴、大正期らしい洋館風駅舎(2001年撮影)



◆2008年に建て替えられた現武並駅舎(2011/09/18撮影)