7月4日(日)、毎月、第1日曜日に行われる学術研修会に参加しました。
九州などは大雨でたいへんなことになっておりますが、金沢は梅雨とは言ってもそんなに雨量が多くない、そんな梅雨が続いています。
本日は、雨でしたが、雨が降るべき時には降らないとね。そんな日も必要なのです。ほどほどがいいのですが、天気にしても、人生にしても、人間の都合のいいようにはいかないもんですね~。
本日の金沢の空(卯辰山より)
第33回 加賀・三策塾
日 時:平成22年7月4日(日) 午前10時~正午
内 容:①症例報告…「下肢筋力低下が球脊髄性筋委縮症であった症例」
金はり治療院 山村美樹 先生
②第59回全日本鍼灸学会学術大会 参加報告
参加者の感想とディスカッション
③鍼灸・医療最新ニュース
④業界報告・連絡事項
金沢市鍼灸マッサージ師会 会長 新保先生 ご挨拶
症例報告では、普段、鍼灸院では患者さまとして経験できないような症例を報告して頂きました。臨床経験も能力も豊富な山村先生です。石川県でもたいへん繁盛されている治療院の一つでしょうね。
このような希な疾患を「治す」のではなく、このような疾患があることを「知り」、患者さまの身体が改善していくには、あるいは、患者さまご自身で身体状況を理解して、どう病気と向き合って行くことが、人生を有意義に過ごして頂くために必要なのか、その指導の持って行き方など勉強させて頂きました。また、そのためには、鍼灸治療を行うべきなのか、西洋医学での精査や治療が必要なのか、鍼灸師が「知って」「行動する」ために、臨床でどう考えていけばいいのだろうかということの方法論なども参考になりました。
症例報告を行う山村先生
症例は、48歳 男性。会社員。腰がジクジク痛む(安静時でも)、長く歩けない(両下肢の筋力低下のため)を主訴で来院。2009年春ごろより、下腿が痛くなり、歩きずらく、階段も力を入れないと登れなくなってきました。腰痛も出現。総合病院整形外科でもMRIなどの診断では腰椎椎間板ヘルニアだということでした。
その症状改善のため鍼灸治療を希望され来院されました。問診や徒手検査、触診などの結果、腰痛は腰椎棘間部の障害からくるものだろうと想定。しかし、夜間痛、両下肢筋力低下、深部腱反射の減弱があることから、慎重に経過を観ていきました。
鍼灸治療により、夜間痛や腰痛はほぼ改善したが、下肢症状に変化なく、下肢後側の筋線維束収縮を発見し、気になったため神経内科を紹介。さらに総合病院においての筋電図、DNA検査の結果、「球脊髄性筋委縮症」と確定診断されました。
その後も、患者はご自身の病気を徐々に理解しつつ、腰痛や肩こりをとるために鍼灸治療を継続されているとのことでした。
座長の中田先生と山村先生
世の中、いろんな病気があるのです。本当に知らないことばかりですね。だから勉強に足を運ばないといけないのですね。これは患者さまのためなのです。
さて、「球脊髄性筋委縮症」とはどんな病気か簡単に…
有病率は10万人あたり1~2人程度と推計。男性が発症します。
遺伝性下位運動ニューロン疾患で、四肢の筋力低下および筋委縮、球麻痺を主症状とし、女性化乳房など軽度のアンドロゲン不全症や耐糖能異常、高脂血症などを合併。筋力低下の発症は30~60歳で、経過は緩徐進行性。原因はアンドロゲン受容体遺伝子の異常。
徐々に筋力が低下し、発症10年で嚥下障害が顕著となり、発症15年程度で車イス生活を余儀なくされることが多く、通常、誤嚥性肺炎(呼吸機能低下による)などの呼吸器感染症が直接死因となることが多い疾患です。
有効な治療方法は確立されていません。
日頃、腰痛や下肢筋力低下により歩行や階段昇降しづらいという患者さまは鍼灸院には多く来院するのではないでしょうか。治療経過があまりよくない患者さまの中には、神経内科や脳神経外科領域で、鍼灸適応外の患者さまがお見えになるかもしれません。
しかし、ここで大切なのは、その後も腰痛や肩こりの改善のために鍼灸治療を継続されていることだと思います。「治す」という立場ではなく、患者さまの生活の質(QOL)の改善や、身体や心の不安を取り除くために、そんな意味では鍼灸治療は効果を発揮するものと思われます。
これは、患者を鍼灸治療院だけで囲い込むのではなく、患者さまの病態に適した医療機関へ紹介することが大切な要素なのだと感じます。患者さまのためには当然のことなのですが、そこに医療者と鍼灸師と患者の信頼関係が生まれ、患者は、それでは、「身体症状の軽減と、少しでも体を良い方向に向け、疾病の進行を少しでも遅らせることができれば…」そんな目的に鍼灸治療を継続していこうということになるのだと思いますね。
本当に奥深い、貴重な経験を報告して頂きました。
その後、私が座長になり、大阪で6月11日~13日に開催された第59回全日本鍼灸学会学術大会の参加報告をいたしました。鍼灸医療の現状は厳しいんですが、それに気づいていない方も多いようで…勉強会や研修会に参加されている同業者は意識は高いと思います。今、流行って、患者さまがたくさん来院されている先生方も、これからの先の展望が見えないと、未来は厳しい状況になってくると思うのです。
その時が来て、ただ文句を言ったり、批判だけをされても、それは自身が原因をつくった上での結果であると思うのです。そうならないためにも、表面に症状として出てきていない「今」こそ、しっかり勉強しておいたほうがいいのではないかと思います。
東洋医学は”未病を治す”医療なのですから、治療家自身がしっかりと自分の立場を観て対処していかないと…と私は最近強く思うのです。杞憂で終わってくれればいいのですが
本日も、短い時間ではありましたが、しっかり勉強させて頂きました。
二葉鍼灸療院 田中良和
九州などは大雨でたいへんなことになっておりますが、金沢は梅雨とは言ってもそんなに雨量が多くない、そんな梅雨が続いています。
本日は、雨でしたが、雨が降るべき時には降らないとね。そんな日も必要なのです。ほどほどがいいのですが、天気にしても、人生にしても、人間の都合のいいようにはいかないもんですね~。
本日の金沢の空(卯辰山より)
第33回 加賀・三策塾
日 時:平成22年7月4日(日) 午前10時~正午
内 容:①症例報告…「下肢筋力低下が球脊髄性筋委縮症であった症例」
金はり治療院 山村美樹 先生
②第59回全日本鍼灸学会学術大会 参加報告
参加者の感想とディスカッション
③鍼灸・医療最新ニュース
④業界報告・連絡事項
金沢市鍼灸マッサージ師会 会長 新保先生 ご挨拶
症例報告では、普段、鍼灸院では患者さまとして経験できないような症例を報告して頂きました。臨床経験も能力も豊富な山村先生です。石川県でもたいへん繁盛されている治療院の一つでしょうね。
このような希な疾患を「治す」のではなく、このような疾患があることを「知り」、患者さまの身体が改善していくには、あるいは、患者さまご自身で身体状況を理解して、どう病気と向き合って行くことが、人生を有意義に過ごして頂くために必要なのか、その指導の持って行き方など勉強させて頂きました。また、そのためには、鍼灸治療を行うべきなのか、西洋医学での精査や治療が必要なのか、鍼灸師が「知って」「行動する」ために、臨床でどう考えていけばいいのだろうかということの方法論なども参考になりました。
症例報告を行う山村先生
症例は、48歳 男性。会社員。腰がジクジク痛む(安静時でも)、長く歩けない(両下肢の筋力低下のため)を主訴で来院。2009年春ごろより、下腿が痛くなり、歩きずらく、階段も力を入れないと登れなくなってきました。腰痛も出現。総合病院整形外科でもMRIなどの診断では腰椎椎間板ヘルニアだということでした。
その症状改善のため鍼灸治療を希望され来院されました。問診や徒手検査、触診などの結果、腰痛は腰椎棘間部の障害からくるものだろうと想定。しかし、夜間痛、両下肢筋力低下、深部腱反射の減弱があることから、慎重に経過を観ていきました。
鍼灸治療により、夜間痛や腰痛はほぼ改善したが、下肢症状に変化なく、下肢後側の筋線維束収縮を発見し、気になったため神経内科を紹介。さらに総合病院においての筋電図、DNA検査の結果、「球脊髄性筋委縮症」と確定診断されました。
その後も、患者はご自身の病気を徐々に理解しつつ、腰痛や肩こりをとるために鍼灸治療を継続されているとのことでした。
座長の中田先生と山村先生
世の中、いろんな病気があるのです。本当に知らないことばかりですね。だから勉強に足を運ばないといけないのですね。これは患者さまのためなのです。
さて、「球脊髄性筋委縮症」とはどんな病気か簡単に…
有病率は10万人あたり1~2人程度と推計。男性が発症します。
遺伝性下位運動ニューロン疾患で、四肢の筋力低下および筋委縮、球麻痺を主症状とし、女性化乳房など軽度のアンドロゲン不全症や耐糖能異常、高脂血症などを合併。筋力低下の発症は30~60歳で、経過は緩徐進行性。原因はアンドロゲン受容体遺伝子の異常。
徐々に筋力が低下し、発症10年で嚥下障害が顕著となり、発症15年程度で車イス生活を余儀なくされることが多く、通常、誤嚥性肺炎(呼吸機能低下による)などの呼吸器感染症が直接死因となることが多い疾患です。
有効な治療方法は確立されていません。
日頃、腰痛や下肢筋力低下により歩行や階段昇降しづらいという患者さまは鍼灸院には多く来院するのではないでしょうか。治療経過があまりよくない患者さまの中には、神経内科や脳神経外科領域で、鍼灸適応外の患者さまがお見えになるかもしれません。
しかし、ここで大切なのは、その後も腰痛や肩こりの改善のために鍼灸治療を継続されていることだと思います。「治す」という立場ではなく、患者さまの生活の質(QOL)の改善や、身体や心の不安を取り除くために、そんな意味では鍼灸治療は効果を発揮するものと思われます。
これは、患者を鍼灸治療院だけで囲い込むのではなく、患者さまの病態に適した医療機関へ紹介することが大切な要素なのだと感じます。患者さまのためには当然のことなのですが、そこに医療者と鍼灸師と患者の信頼関係が生まれ、患者は、それでは、「身体症状の軽減と、少しでも体を良い方向に向け、疾病の進行を少しでも遅らせることができれば…」そんな目的に鍼灸治療を継続していこうということになるのだと思いますね。
本当に奥深い、貴重な経験を報告して頂きました。
その後、私が座長になり、大阪で6月11日~13日に開催された第59回全日本鍼灸学会学術大会の参加報告をいたしました。鍼灸医療の現状は厳しいんですが、それに気づいていない方も多いようで…勉強会や研修会に参加されている同業者は意識は高いと思います。今、流行って、患者さまがたくさん来院されている先生方も、これからの先の展望が見えないと、未来は厳しい状況になってくると思うのです。
その時が来て、ただ文句を言ったり、批判だけをされても、それは自身が原因をつくった上での結果であると思うのです。そうならないためにも、表面に症状として出てきていない「今」こそ、しっかり勉強しておいたほうがいいのではないかと思います。
東洋医学は”未病を治す”医療なのですから、治療家自身がしっかりと自分の立場を観て対処していかないと…と私は最近強く思うのです。杞憂で終わってくれればいいのですが
本日も、短い時間ではありましたが、しっかり勉強させて頂きました。
二葉鍼灸療院 田中良和