二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

子どもの体力低下・学力低下 ③

2009年04月11日 | 成長期の身体と心
少し面白い発想から”運動””脳”というものを考えていきましょう。

○カンがいいということ
(養老)今、なぜ、子供に虫を捕らせたほうがいいのか。その問題を考える時に、世間の皆さんに、ぜひ気づいてほしいことがあるんです。それは要するに、脳みそは総合なんだということです。言いかえると、脳の機能は回転なんだということ。
(奥本)なるほど。それで?
(養老)まず外界からの情報が感覚を通して脳の中に入ってきますよね。これがインプット。脳の中で計算して、考えて、その結果が肉体の運動として出ていく。これがアウトプットです。たとえば、今、ここにコーヒーカップがある。すると、まず「目の前にコーヒーが入ったカップがある」という情報が視覚を通して脳にインプットされる。脳で計算して、「しゃべり疲れたから、ちょっと飲んでみるか」と考える。その結果が、手をのばしてコーヒーを飲むという運動としてアウトプットされるわけだ。
(池田)入力した情報を脳の中で解釈して、出力するわけだ。
(養老)そしてコーヒーを飲んでみたら、「もう、ぬるいや」と感じる。すると脳は「もう一度入れ直そうか」と考える。そういう具合に、インプットとアウトプットが再入力されながら、ぐるぐる回っているんです。
(奥本)なるほど、回転ですね。
(養老)感覚→脳→身体→感覚……という具合に、情報をぐるぐると回していくことが、とても大事なんです。このことの重要性に気づいたのは、脳研究の世界でも、実は比較的最近のことなんですけどね
(池田)再入力あるいは再代入するプロセスとして、脳を捉えるわけですね。
(養老)そうです。だから赤ん坊がハイハイすることは、たいへん大事な意味があるわけ。ハイハイした瞬間から、自分の手足を使って世界の中を移動するという、とても知的な作業が始まるんです。これが、脳の発育にとって、とても大きい。脳性麻痺の赤ちゃんの場合、かわいそうだからと歩かせないでおくと、言葉が出てこないんです。
(奥本)一歩動いたら、すべてのものの角度が変わってきますから。
(池田)赤ん坊の目に見えいているものが変化していく。
(養老)でも、そういうふうに次々に変化していくものを全部覚え込もうとすれば、脳が壊れちゃうんです。情報量が多すぎる。それでどうするかと言うと、自分が移動することで違った世界がどんどん現れるけど、その世界は根本的には一つの同じ世界で、違うように見えているだけだというふうに、脳がまとめていくわけですよ。概念にまとめあげていく。
(池田)われわれが中学校で習う比例という概念も、同じようなことですね。
(養老)そう、相似とかね。あの比例という概念は、実はわれわれは、数学で教わる以前に理解しているんですよ。あれは要するに、同じものが、遠くでは小さく見えて、近くでは大きく見えるということでしょう。遠くにいると猫だけど、近くに来たら虎だったって報告できる人はたぶん存在しないんですよ。数学って、元来そういうものなんだと思う。感覚的には、すでに知っていることなんですよ。その感覚が優れている人を、「カンがいい」と言うわけ。
(奥本)ところが、学校でも役所でも、そのカンというものを認めない。数値化できないし、カタログデータ的に登録しにくいから。むしろ特殊なカンを持った子は先生に嫌われて落ちこぼれたりする。農協のトマトやキュウリと同じで、形のそろったまっすぐな、大きさも一定のもののほうが扱いやすい。規格外のものははじき出されるようになっている。
(池田)そういうカンのよさこそ、知的な作業においては最大の武器になるのにね。
(養老)そのカンを磨くには、小さい頃から再代入、再入力を繰り返して、脳をブンブン回さないとダメなんですよ。
(奥本)要するに、外に出て、自然の中で思う存分遊べということですね。
(養老)それしかない。そして、数ある遊びの中でも虫捕りがなぜいいかというと、それはほぼ理想的に脳が回転するからです。感覚から入って、計算して、その結果が運動として出て、出た結果が再入力される。虫を見て「いた」と思ったら、筋肉を動かして、捕まえて、自分で調べて、標本を作って、考えて、また虫を見て……という具合に、インプットとアウトプットが連鎖しながらくるくる回り続ける。
(奥本)しかも、虫の行動を観察して、次はこっちに飛んでくるから、ここで待っていて、こう網を振ると捕れるなと、一所懸命考える。
(池田)一生終わらない(笑)。やっぱり自然物を相手にしていると、面白いですよ。
(養老)子どもをまともに育てようと思ったら、とにかく戸外で、自然の中で作業させるのがいちばんいいですよ。人間はもともと、そうやって生きてきたんだから。いくら近代化したって、子どもは常に白紙で生まれてくる。近代的な世界の中で、子どもを育てた方がよくなるという実験結果は、どこにもないでしょ。

『虫捕る子だけが生き残る 
  ~「脳化社会」の子どもたちに未来はあるのか~』
        養老孟司 池田清彦 奥本大三郎 著


人は素晴らしい文明を築いてきましたが、私たちは、大自然が創り出す「すごい」と息をのむような絶景を作り出すことはできません。人が作り出すすべての物は自然の恩恵を受けないものは一つとして存在しません。

人が人として豊かに育つためには、自然を感じ、自然から学び、自然の豊かさを知り、自然に畏敬の念を持ち、自然に感謝することが大切であり、それが人を生かす道であるのだろうと思います。

さ~て、子どもたちはテレビの画面の前で座ったり、携帯ばかり見ていないで、自然の中で遊びましょう~ね

太陽のあたたかい光をあび、心地よい風に吹かれ、力強い大地を踏みしめ、清らな水の流れを感じ、

楽しく、元気に、自然の中で遊びましょう

二葉鍼灸療院 田中良和
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子どもの体力低下・学力低下 ②

2009年04月11日 | 成長期の身体と心
近年、脳科学や神経科学の分野では研究が進み、脳機能、あるいは脳と体をを結ぶ様々な重要な発見が相次いでいて、ミクロの分野において、人を調整・制御する脳機能において様々な絵が描くことでできるようになっているようです。

「運動をすると、セロトニンやノルアドレナリンやドーパミン―思考や感情に関わる重要な神経伝達物質―が増えることはよく知られている。読者の皆さんも、セロトニンについては耳にされたことがあるんだろうし、その不足が抑うつに関係していることもご存じかもしれない。私が会ってきた多くの精神科医でさえ、それ以上のことはあまり知らないようだ。
強いストレスを受けると脳の何十億というニューロン(神経細胞)の結合が蝕まれることや、うつの状態が長引くと脳の一部が委縮してしまうこと、しかし運動をすれば※神経化学物質や成長因子がつぎつぎと放出されてこのプロセスを逆行させ、脳の基礎構造を物理的に強くできること、そういったことをほとんどの人は知らないのだ。実際のところ脳は筋肉と同じで、使えば育つし、使わなければ委縮してしまう。脳のニューロンは、枝先の「葉」を通じて互いに結びついている。運動をすると、これらの枝が成長し、新しい芽がたくさん出てきて、脳の機能がその根元から強化される」

 ※神経伝達物質の他、ニューロンの成長や機能調節などの様々な役割を担っている物質。

「神経科学者たちは、運動が脳細胞の内部―遺伝子そのもの―に及ぼす影響を研究し始めたところだ。生物の基礎である遺伝子レベルでも、体の活動が心に影響することを示す兆候がみつかっている。
また筋肉を動かすとタンパク質がつくり出され、血流によって脳にたどり着き、高次の思考メカニズムにおいて重要な役割を果たすことが分かってきた。そうしたタンパク質群にはインスリン様成長因子(IGF-1)や血管内皮成長因子(VEGF)などがあり、その発見により、心と体の結びつきを新たな角度から見られるようになった」

「神経科学者がこうした因子の機能に注目し始めたのはここ数年のことだが、続々と新しい発見がなされ、驚異的な事実が明らかにされている。脳のミクロの環境でなにが起きているかについては、わからないことの方がはるかに多いが、すでにわかっていることだけでも人々の生活は変えられる。そして、おそらく社会も変えることができるはずだ」

『脳を鍛えるには運動しかない』
  ジョンJ.レイティWithエリック・ヘイガーソン 著より


アメリカのイリノイ州ネーパーヴィル203学区では、新しい体育の取り組みとして「0時限授業」が行われて17年になるそうですが、意外な結果が出ているようです。「0時限」というのは、通常の授業が始まる前という意味であり、その前にグランドをそれぞれ目標を設定し走る(有酸素運動)というものです。

様々な効果を及ぼしたのですが、最たるものは、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の結果でした。数学・理科など二つの大切な教科における生徒の知識レベルを国際比較するために作られたテストです。

このテストは1995年以来、4年ごとに実施されています。1999年には、38カ国から23万人の生徒が受験し、米国からは59000人が参加しました。ネーパーヴィルの生徒もまとまって参加し、生徒の成績を国際基準に沿って調べました。米国の生徒の平均が、理科18位、数学が19位で、ジャージーシティとマイアミの地域はそれぞれの教科で最下位だったそうです。

しかし、ネーパーヴィルの生徒はなんと理科のテストで1位(世界一)となり、数学では6位となり、その上にはシンガポール、韓国、台湾、香港、日本だけだったという、米国の教育水準からでは考えられない成績を残し、全米が注目することになったそうです。

全てが運動の効果とは言えないまでも、体力(運動)と学力(脳)は密接な関係があることが言えると思います。

皆さま、ご存じのように、運動ことに有酸素運動は脂肪を効率的に燃焼し、肥満予防になるばかりか、脳神経細胞に働きかけ、学力向上、心の安定に貢献するという事実があるのです。

学力を向上させたければ、30分から40分の有酸素運動を定期的にやってみてください。必ず頭がスッキリし、さらに記憶力が増すことでしょう。

さあ、運動をしよう

二葉鍼灸療院 田中良和
コメント (2)
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子どもの体力低下・学力低下 ①

2009年04月11日 | 成長期の身体と心
現在、子どもの体力低下、学力低下が問題となっています。今年1月に文部科学省から発表された初の全国体力テストの都道府県ごとの結果が波紋を広げつつあるようです。

地域間での格差があるようです。この地域間の格差や評価方法は置いといて、”子どもの体力低下”の原因はというと、やはり直接的には「身体活動量の低下」です。携帯電話やインターネットの普及、テレビを視聴する時間やテレビゲームの増加により、“外で遊ぶ”機会が減少しています。また、学校の統廃合の問題や、通学での安全確保という観点から、保護者の車やスクールバスでの送迎により、学校へ行く時ですら運動する機会が失われています。

昔は、山や川、公園など外で遊ぶ環境がたくさんありました。学校から走って帰ってくると、ランドセルを家に置き、また走って外に遊びに出る子どもが多かったように思えます。生活の中に運動があったのではないでしょうか。山で虫をとり、道なき道を探検し、川で魚をとり、木に登り、でこぼこの山道を駆け巡ることで、総合的な神経機能が発達し、さまざまな生活に順応する強い体力が養われたのだと思います。

外で遊ぶ=自然との対話の中で、「これは危険だ」「虫はこう動くから、こうしたら上手くとれるんだ」「川には深いところもあるんだ」「この草は草笛がふける」「木を速く登るにはどうしたらいいか」などなど、自然から危険、対応力、知恵、関心、興味、いろんな体験を通じて、総合的な判断能力や体力が養われます。

確かに現代は危険と隣合わせですが、「あれをしてはいけない」「危ないから…」など過剰に安心、安全を強調しすぎてもいけないし、また、文明の発展してきた一つの要素である“便利””楽”というものも追及し、子どもの頃からその環境につかっていると、ストレスに弱い、対応力、応用力の欠如した、総合的体力がない子どもが育つことは目に見るより明らかではないでしょうか。

また、間接的というよりも、これも身体運動量減少と並列して、大きな要素となっているのが、食事や睡眠などの生活習慣の悪化です。例えば、朝食を食べてこない子供は、小学生で約1割、中学生で約2割、高校生では3割であり、食べている子どもも、パン1枚であったり、おにぎり1個であったりという例も多いようです。

食事は現代医学的なカロリー(熱量)で計算されるようなものでは、片手落ちです。その食品自体の食性(漢方で言う熱・温・涼・寒など)、含有栄養の量(旬のものか、地元産のものか、オーガニックのものか、など)、ご飯をつくるお母さんはたいへんかもしれませんが、そのあたりも少し意識にいれておいたほうが、質のよい食事ができます。

朝食に関しては、食べないほうが健康になるという説をとる方々もいて、考え方も様々ですが、学校では、体育あり勉強ありで、エネルギーを消費するので、食べすぎない程度の、ビタミン・ミネラル豊富な朝食をとるべきだと思います。私は和食がおススメだと思います。そして、ゆっくり噛んで胃腸の働きを良くし、排便反射を起こさせ溜まった便をスッキリ排出することが大切でしょう。

睡眠は成長ホルモンの分泌が最大になる時間です。また、記憶をしっかり脳に刻み込むことも行われるようです。また、胃腸の機能が活発になり、体の新陳代謝が行われ、細胞新生が活発に行われます。「寝る子は育つ」とはよく言ったもので、昔の人は人間をよく観察していたんですね。

低体温であったり、貧血であったり、疲れやすい、半分眠ったような状態であったりする子どもが多くなり、このような子どもの多くは、学校へ登校しても体調不良で、そのまま保健室に登校する子どもが増加しているようです。これは遅くまで起きていたりなど、睡眠のリズムが狂っていることが大きな要因の一つでしょう。

通学意欲・学習意欲の欠如の原因の第1位は「体調不良」であるという調査報告もあります。今、子供には「心のおかしさ」ということより、むしろ「体のおかしさ」が起こっており、早急に体のケア=運動の処方が必要であるようです。

文部科学省は、「早寝早起き朝ごはん」「外遊び」を軸にして、正しい生活習慣を身につける重要性を訴えています。人間の営みから言えば当然のことなのですが、当たり前のことを当たり前にやれないのが現代です。文科省が行う学力テストでトップクラスの福井、秋田県などは体力面でも上位に位置しているということです。

この他に、体育授業時間数の減少や質の変化などもあり、複雑に原因が絡み合っており、教師、親、行政、地域社会など協力して子どもをサポートしていくことが大切なのだと思います。

子どもは社会の宝です。子どもの健康を考えることは大人の責任です。それが国の基礎ともなります。

②では、体力(運動)と学力(脳)の関係をみていきましょう。

二葉鍼灸療院 田中良和
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