雪月花 季節を感じて

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きちかうの花

2008年09月17日 | 筆すさび ‥俳画
 
 きちかうの花
 秋ちかう野はなりにけり白露のおける草葉も色かはりゆく
 (『古今集』 紀友則)

 「きちかう」の名で桔梗の花を詠んだもっとも古い和歌です。物名歌のひとつで、「秋ちかう野はなりにけり」に「(あ)きちかうのはな(りにけり)」が詠みこまれています。白露の候にふさわしい歌ですね。

 桔梗を詠んだ歌はすくないのでしょうか、『春夏秋冬 和歌・短歌歳時記』(佐々木幸綱監修、三省堂)に「桔梗」の項は見当たりません。

 むらさきの桔梗のつぼみ割りたれば蕊(しべ)現れてにくからなくに
 (斎藤茂吉 『赤光』)

 主人も、子どものころはこの歌のように、庭に桔梗のつぼみを見つけては割って遊んだそうです。大人になったいまも、つぼみを見つけますと目を輝かせるので、手を伸ばす前に引き止めています ^^;


 俳画教室に通うきっかけになったのが桔梗の花でした。立ち寄ったカルチャーセンターの窓口に飾られていた桔梗の俳画。その絵の涼しさに引き寄せられるように、絵筆をもつことになったのでした。
 あれから二年。ようやく憧れの花と向きあうときがきたのです。お手本を繰り返し臨書し、書き損じを身のまわりにいっぱいにしながら、乾山の「花籠図」を意識した二枚目の短冊に、やっとのこと新涼を得たような気がします。


中陰桔梗
(消しゴムはんこ)

 かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ (久保田万太郎)

 桔梗にかぎらず、秋草は群れ咲いても束ねても、風の吹きすさぶ淋しさがあります。山桜がやまとごころなら、秋草は、もののあはれの代名詞でしょう。

 吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ
 (若山牧水)