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きちかうの花
秋ちかう野はなりにけり白露のおける草葉も色かはりゆく
(『古今集』 紀友則)
「きちかう」の名で桔梗の花を詠んだもっとも古い和歌です。物名歌のひとつで、「秋ちかう野はなりにけり」に「(あ)きちかうのはな(りにけり)」が詠みこまれています。白露の候にふさわしい歌ですね。
桔梗を詠んだ歌はすくないのでしょうか、『春夏秋冬 和歌・短歌歳時記』(佐々木幸綱監修、三省堂)に「桔梗」の項は見当たりません。
むらさきの桔梗のつぼみ割りたれば蕊(しべ)現れてにくからなくに
(斎藤茂吉 『赤光』)
主人も、子どものころはこの歌のように、庭に桔梗のつぼみを見つけては割って遊んだそうです。大人になったいまも、つぼみを見つけますと目を輝かせるので、手を伸ばす前に引き止めています ^^;
俳画教室に通うきっかけになったのが桔梗の花でした。立ち寄ったカルチャーセンターの窓口に飾られていた桔梗の俳画。その絵の涼しさに引き寄せられるように、絵筆をもつことになったのでした。
あれから二年。ようやく憧れの花と向きあうときがきたのです。お手本を繰り返し臨書し、書き損じを身のまわりにいっぱいにしながら、乾山の「花籠図」を意識した二枚目の短冊に、やっとのこと新涼を得たような気がします。
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中陰桔梗
(消しゴムはんこ)
かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ (久保田万太郎)
桔梗にかぎらず、秋草は群れ咲いても束ねても、風の吹きすさぶ淋しさがあります。山桜がやまとごころなら、秋草は、もののあはれの代名詞でしょう。
吾木香すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ
(若山牧水)