本日六日は待ちに待った十五夜というのに、朝から台風の影響で風雨が強く、災害も懸念されます。みなさま、どうかお気をつけておすごしください。
和菓子製作の教室に一日だけ参加して、お月見用の「うさぎまんぢう」を作りました。
♪ うさぎ うさぎ 何見てはねる
十五夜お月さん見てはねる
月にはうさぎがいて、臼と杵で餅をついている‥ といいますね。この臼・杵・餅という三点セットにはそれぞれちゃんと意味があります。臼という陰の道具と、杵という陽の道具をあわせて神饌(しんせん、神に供える飲食物ののこと)を生む─ つまり、餅つきそのものが豊穣を象徴的に表しています。これは、中国の陰陽道からきている話なのでしょう。中国では、満月の夜にあの「月餅」を食して厄を祓うそうです。
では、うさぎは? というと、冒頭の唄のとおりで、月を見てはねます。古くから、十五夜の月は人や動物を狂わせるという言い伝えがあり、うさぎが月を見てはねるのは一種の「狂い」なのだとか。狂うのは神がのりうつって起こる現象で、ここでは豊穣の神である月読命(つくよみのみこと)がうさぎに憑いて豊かな稔りをもたらす‥ というわけなのです。
満月は「望月(モチづき)」といいますし、「月」の言葉に「憑き」を連想するのも、こんな由来からなのでしょう。満月には不思議な力がありそうです。(ただし、今年は十六夜の十月七日が満月です)
「うさぎまんぢう」のうす桃色の耳としっぽは羊羹です。目は食紅で描きました。羊羹から型抜きする耳の大きさや饅頭に付ける位置、目の形や大きさで、うさぎの表情はまったくちがったものになるんですよ。(教室の先生のお話では、うさぎの表情はいつも作った人に似るんだそうです。さて、このうさまんはわたしに似ている?かしら‥) うす皮の中には、こし餡につつまれた甘露煮の栗がひと粒、入っています。十三夜(栗名月)にもピッタリのお菓子ですね。一人四つずつ作り、ひとつは教室で試食して、お土産に三つを持たせてもらえました。だ円ではなくて十五夜月と同じようにまぁるい形をしているので、「月兎」と名づけました。
それにしても、この愛らしい“うさまん”の意匠を初めに考えたのは、いつの時代の誰だったのでしょうね。右の写真は、「月兎、月を見上げるの図」です ^^ 哀愁のただよふ後ろ姿もかわいいけれど、後ろ姿だけだと「あら、白ブタさん?」と思ってしまう‥(笑
かはらじな知るも知らぬも秋の夜の月待つほどの心ばかりは
(『新古今集』 上東門院小少将)
兼好先生は「月はくまなきものをのみ見るものかは。 雨にむかひて月をこひ‥」とおっしゃるけれど、それでも気になる雨雲のむこうのお月さま。せめて、明日の望月をたのみにして、今夜は芋料理を一品作って、食後にうさまんとお茶を楽しみましょう。今年の稔りに感謝しつつ‥
昨日の京都新聞「月」から。 芭蕉と同時代の女流俳人、田捨女(デンステジョ)に「いつかいつかいつかと待ちし今日の月」という句がある。(中略)捨女の句は「今日の月」がどのような月かお表現している。どのようなかたちの月か、お分かりだろうか。「いつか」(何時かと五日の掛け言葉)を三回繰り返しているから、五×三で、すなわち十五夜の月が「今日の月」(中略)芭蕉だって「月見する座に美しき顔もなし」と詠んだ。どうして月見の席には美顔の人がいないのか。これが謎だが、答えは月の美しさに負けるから。と。わいわい
臼・杵・餅という三点セットにはそれぞれ意味があったのですね。いいことを教えていただきました。
朝から土砂降りの雨ですが、雲の上に輝くお月さまに想いを馳せたいと思います。
作った人に似るということですので、雪月花さんを想像してみました。色白でかわいい方でしょう・・・プロフィールの「はとぶえ」にも似ていらっしゃるのかしらね^^)
昔、娘らが小さい頃、明月の夜はベランダに芒の穂を生け、月見団子を供えて団欒したものです。桃山御陵の裏山辺りから涼しい風が流れて来て、幼い「うさぎ」の歌声を夜空へ運んでくれましたっけ。「わたしらは五つ。ママは六つでパパは七つ」「うさぎさんにも二つ上げる」。姉が妹をなだめながら団子を分けてくれたのも今は昔。その団子は黄な粉をまぶした小さな月見団子で、「うさぎまんぢう」の風情にほど遠いものですが、それでも幼子たち大喜びでした。
この「うさぎまんぢう」は雪月花さんのイメージなら、プロフィールの「はとぶえ」が見方によっては女性の顔に見えて、私はずっと雪月花さんのイメージと思っていました。どちらもよく似ていて、色が白くてふっくらと可愛くて上品で・・・。
二人が嫁いで家を出てからは、ベランダに出て月見をすることもなくなりました。ことに今日の「無月」を想い遣りながら、熱燗で一杯(二杯三杯・・・と終るはずもなく)、明月の出るまで待つことにしますか。関東地区はどうでしょうか。日頃のオコナイが善い人には、名月も顔を見せてくれるでしょう。雪月花さんは大丈夫です。たぶん。
「逸題」 井伏鱒ニ
けふは仲秋名月
初恋を偲ぶ夜
われら万障くりあはせ
よしの屋で独り酒をのむ
春さん 蛸のぶつ切れをくれえ
それも塩でくれえ
酒はあついのがよい
それから枝豆を一皿
ああ 蛸のぶつ切れは臍みたいだ
われら先ず腰かけに座りなおし
静かに酒をつぐ
枝豆から湯気が立つ
けふは仲秋名月
初恋を偲ぶ夜
われら万障くりあはせ
よしの屋で独り酒をのむ
長崎はいいお天気で「名月」が綺麗ですよ。
私はblogでお知り合いになった「磯子風月堂
」様に"お月見団子”送っていただきました。なんとも愛らしいお団子です。
明日は「月見茶会」に出かけます。
陰陽五行の世界、お茶の世界もべて陰陽でなりたっているようです・・・
> かめひろふささん、
かめひろふささんのお店にもありますか、うさまん ^^
> ささ舟さん、こんにちは。
ふふ、名無しのごんべぇさんでも、すぐに「あ、きっとささ舟さんだわ」と分かりましたよ。ささ舟さんらしいコメントでしたもの。
「老松」の満月まんじゅうはどんな意匠なのでしょう。見るだけでなく、食べてみたい‥ ^^ 嵐山のお店で生菓子とお薄をいただいたことが一度だけありますけれども、店構えも立派ですね。
『万葉集』では、田捨女さんの「いつかいつかいつかの月」を「三五夜の月」、あるいは「三五月(もちづき)」「十五月(もちづき)」と表記したようです。そんなむかしから九九算があったのかしらん。
月のアバタ(クレーター)もえくぼ‥といわれては、美人ですらお月さまの美しさにはかないませぬ‥(笑 わいわい
> 夕ひばりさん、
今夜は残念でしたけれども、月灯りに照らされる青梅の里も美しいでしょうね。わたしも羽村にいたころは、南向きのリビングの、窓際のソファに寝転がって月光浴をしたものでした。
月の歌人、明恵上人がお好きとか。明恵上人のように、月の友になれたらよいですね ^^
プロフィールの「はとぶえ」もうさまんも、雪月花本人の姿とはちがうかも‥ 白くてふわっとしたイメージは、わたしの憧れなのかもしれません。
> 道草さん、
「はとぶえ」とうさまんのイメージは、上記↑のとおりなんですよ。色白でぽっちゃり型とはちがうかな、残念ながら ^^;
「うさぎさんにもあげる」とおっしゃったお嬢さまのお気持ちがうれしいですね。豊穣を祝うとき、家畜や家ネズミ、田んぼに棲息する生きものたちにも収穫を分けるというのが、すこしむかしの農家では当たり前だったと思うのですけれども、そんな自然の稔りへの感謝の気持ちがだんだんと日本人のこころから消えつつあるようで淋しいです。
京都でお月見をしたのは、もう何年前のことになるのでしょう。鴨川の堤を、東の空にぽっかりと浮かんでいた月と並んで歩いたのを覚えています。大沢池に龍頭鷁首の舟を浮かべ、管絃の調べや白拍子の舞などに興じながら月を仰いでみたいものです ^^
井伏鱒二の詩にあるように、仲秋の月に何か特別なものを感じずにはいられません。蟹座生まれのわたしにとりましては、月の女神は守り神なのです。有難うございました。
> uragojpさん、
やはり今宵の九州はお月見日和なのですね。いまごろ月見のお茶を味わっていられるころでしょうか。
昨日はテーブル茶道の第一回目のお稽古日でした。風炉の季節も終わりですから、名残の茶会となりました。茶花はすすきに小菊、まだ青い柚子の実も添えられ、お床には「鶴声秋更高」。主菓子は「むさし野」でしたから、晩秋の野に吹きすさぶ寒風すら感じられました。
でもね、先生はおきものだったのですが、立礼とはいえ、助手の若い女性のノースリーブのミニワンピースにロングブーツといういでだちにはちょっと驚きました(笑
とってもかわいらしいウサまんちゃん。
すでにお腹の中で溶けちゃっているのでしょうか?手作りされたのだし、さぞ美味しかったことでしょうね★お菓子が作れるなんて、すごいです。
東京は、嵐の雲のずっと上の方からお月様が下の様子を見ているようです。
この月をいったい今までどのくらいの人が仰ぎ見たのでしょう。
お月見に関する色々を教えて下さって、ありがとうございます。
黄昏時、まん丸のお月様が上がってくるさまは、さぞさぞ心躍る瞬間だったことと思います。明日我が家もお抹茶、出してみます。
嵐が無事に立ち去ってくれますように。
いつまでも眺めていたいです。澄んだこの美しさはなんとも形容し難いです。観るしかない(笑
私のブログに写真載せています。よろしかったら観てくださいね。
満月の紅き球体出で来る 山口誓子
うさまんぢうは、きれいで食べるの躊躇しますね。後姿のぶたちゃん(ではなくうさぎさん)とてもかわいいです~
> あべまつさん、おはようございます。
ふふ、昨夜夫と残りのうさまんも食べちゃいました。いったん冷凍したものの、室温でゆっくりと解凍したら味も落ちていませんでした。でも、やはり和菓子教室で食べた“できたて”のほっかほかうさまんが何より美味しかったです ^^
ようやく雨が上がりましたね。今日は洗濯物も布団もきれいに乾きそうでうれしいです。お互いに今宵の月を楽しみましょう。
> みいさん、
四国の十五夜月を有難うございます。うっすらと雲のたなびくようすも美しいですね。
十五夜の雲のあそびてかぎりなし (後藤夜半)
秋の月の光って、名刀の放つ光のようにさえざえとして、身にしんしんとしみわたるような気がします。みいさんのおっしゃるように、「日本人でよかった‥」としみじみ思います。
うさまんは昨夜お腹におさまりました ^^ 東京は今宵がお月見日和となりそうです。