劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

新作オペラ『雪女の恋』制作過程5<公演案内DMとロビー書展>

2018年11月30日 | オペラ
 公演チラシが完成すると、印刷物として関係者に配布される。私も300名分のDM発送の準備に取り掛かる。年賀状のやり取りをしている友人・知己たちへの公演案内である。
 今回は案内状に一筆添える必要がある。19歳から始めて半世紀を超える上演活動の大きな節目とするため、また時期的にも年末年始の挨拶も兼ねるので、個人的なメッセージを一人一人に送りたいのだ。一筆とはいえ、言葉を通した会話である。これを数百人に向けて書くのには、一日や二日では無理で一週間は掛かる。投函してからしばらくして通帳(チケット代金の振込先)を開くと、入金額と氏名の印字が確認される。すぐさまチケットを郵送するのだが、その際には会場の座席表も同封する。全指定席にしたため、その方の座席が一目で分かるように印をつける。
 演劇からオペラへとジャンルは移ったが、ライフワークとしての上演活動が「芸術を通した人間の集会」というモットーを胸に抱き続けてきた。かつて「民衆演劇」を世に問うてきた先人たちがいる。ロマン・ロラン『民衆劇論』(大杉栄訳『民衆芸術論』)、ジャン・ヴィラール「国立民衆劇場」、ベルトルト・ブレヒト「叙事詩的演劇」、宮本研(『明治の柩』『ザ・パイロット』『美しきものの伝説』)…学生時代に出会った書籍や舞台、そして戯曲の手ほどきを受けた劇作家から受けた影響は私の上演活動の核になっている。来年2月、ホールのロビーで、人々はどんな語らいをするのだろう。
 さて、ロビーといえば、当日「雪女の恋」にちなんだミニ書展がその一角で催される。「奎星会」の役員を務められている成田誠一氏と門下生お二人の書が展示されるのだ。成田先生には、前回公演の「悲戀~ハムレットとオフィーリア」の題字をお願いした。『今回、台本にある詞章を素材に書いてみたい』というお言葉を頂き、二行および三行の詩句を三点お送りしたら、すべて作品にする、とのことだった。今月初め、その作品が東京都美術館での「奎星展」に出品された。美しく・たおやか・力強い書たちであった。それらは、別々の展示コーナーに掛けられていたのだが、東京文化会館小ホールのロビーでは、三作がまとまって「雪女の恋」の世界を表出することとなる。ホール内では「歌劇」、ロビーでは「書」によって、人間の魂と美が深く描かれる。


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