劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

図書館+朗読講座の広がりの底流に(前)

2017年11月18日 | 創作活動
 戦後、1$=360円、横須賀のドブ板通りには米兵が溢れかえっていた。校舎に入りきれない生徒数を抱えた小学校では、午前のクラス・午後のクラスに分かれる「二部授業」が実施されたいた。あれから70年近くが経ち、米軍基地は残された一方で経済的復興を遂げた日本だが、貧しさを知っている私たち少年は後期高齢者になろうとしている。少子高齢化とか逆ピラミッド型の人口構造とかで、払い込んだ年金資金も回収できない事態に見舞われている私たち老人は、政府の犯罪的無策の前で苦境に立たされている。それ以上に問題なのは、核家族化・孤老死の日常化・生き甲斐の喪失など精神的安定の崩壊状況である。経済的物質的困窮には耐えられても、精神的支柱や人間としての誇りを失うことは生きる道を絶たれるのに等しい。
 私個人は、若さに任せ「安定」を捨てて「演劇(不安定)」の道に身を投じた結果、年金では生活できず、講師稼業を40年ほど続けて糊口をしのいている。しかし、子どもたちと向き合いつまらない大人とは付き合わなくてもよい毎日は、ほとんどストレスが掛からないので精神的には好環境にいると言えよう。さらに近年有り難い出会い―地元馬込図書館との協働作業「朗読講座」―に恵まれた。
 旧跡馬込文士村には昭和初期多くの作家たちが居住し執筆活動を展開した。私と図書館長の沼田さんは馬込文士たちの作品を素材とした「参加型朗読会」を企画し図書館主催の事業として平成27年から実施してきた。回を重ねるごとに内容も充実してきて、入門編に加えて今年から研究編も開催されることになった。取り上げた作家も文士村の先達者片山廣子をはじめ、村岡花子・川端康成・宇野千代・山本有三・山本周五郎、それに外国・日本の代表的な童話がプログラムとなっている。
 この図書館主催の朗読講座の講師を引き受けて何よりも心に残るのは受講者である区民の皆さんの参加姿勢である。担当講師の朗読を聴くだけの講座ではなく、参加者が個人的に指導を受けて発表する会でもない。まず朗読の基本を全体で学び、その後グループを構成して参加者同士の交流もしながらグループ発表を行う「参加型朗読会」なので、自主性や積極性、協調性も必要となる。皆さんはそれらを見事にこなしつつ朗読のレベルアップを目指す、その姿に頭が下がるのである。
 以下、今回、図書館から送信されたデータである。

第 4 回「馬込文士の文学と名作童話を味わう」(研究編) アンケート結果(3日目)
日時:2017年10月14日(土)14時から16時
会場:馬込図書館
参加人数:12名(男2、女10)
アンケート集計数:12(回収率 100%)
本日の感想をお聞かせください。

 他グループの読みが大変勉強になりました。グループ学習の際にまだまだ遠慮がありました。長く続けて直しあえる関係までやっていければよかった。
 グループでの練習は初めてのことでしたが、この方法も大変勉強になりました。指導が具体的でわかりやすくてよかった。できれば一人が通しで読める時間があればと思います。せめて二人くらいで読めれば。
 先生のお話は大変勉強になりました。ありがとうございます。時間が合えばこれからも参加したいです。発表はドキドキでした。グループ学習は楽しかったです。
 登場人物になりきることは難しかった。地の文が速くなりがちでご指摘のとおりでした。さぶの朗読は大変良かった。作品に引き込まれました。
 とても楽しく有益な時間でした。もっと長い時間講習を受けたいです。
 グループでの意見をそれぞれ参考に楽しく勉強ができてよかった。台詞なしの場面を読んだので次回は台詞を読みたい。先生の講義は大変勉強になりました。ありがとうございました。
(残り半分は、次回の記事へ)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする