劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

高校演劇講師としてのゴール

2013年07月24日 | 日本橋女学館高校
 
 神奈川県立神奈川総合高等学校における10年間に続いて、2006年より日本橋女学館高等学校にて演劇研究クラスを立ち上げて8年、来年3月をもって目出度く私は演劇講師はお役御免となる。  
 7月21日(日)、その日本橋女学館高校卒業公演が多目的ホールで行なわれ、観客の盛大な拍手に包まれつつ幕を下ろした。終演後、講師挨拶に続く出演生徒たちからの花束贈呈は、今や恒例となった。普段はやんちゃな娘たちが胸を詰まらせがら涙に暮れる姿を見ると、毎年のことでありながら花束を受け取る私たち教師も胸が熱くなる。
 今年は、担当講師三名にそれぞれ色紙も手渡された。そこには、彼女たちの寄せ書きが詰まっており、17~18歳の娘たちの言葉が踊っている。「佐野先生へ」ときちんと書く生徒は少数で、「ごろちゃんへ!」とか「ごろちん♪」と書き出されている。
 この第6期生の場合、私は演劇史や戯曲研究などの座学を担当したため、教室や演劇スタジオで歌舞伎の仕掛けやギリシャの劇場の映像を見せたり、テキストを片手に話したりすることが多かった。
 『先生が演劇の話をするときに、とっても楽しそうに話しているのがすごく好きです!』『楽しそうにお話しするごろちんを見て、こっちまで笑顔になります♪』…教師にとって生徒は「鏡」、改めて自分は芝居が好きなのだと気づかされる。また、授業中つい脱線してしまうことが多い。「イカ刺しをつまみに一杯やるのが楽しみ」などと口を滑らせたことがあったのかもしれない。『先生、大人になったら、飲みにつれてってください!』…男子生徒なら書かないようなことも女の子はサラッと書く。
 彼女たちが卒業する来春に、私も「卒業」する。おそらく再会の機会はないだろうが、もし浅草付近でバッタリ出くわしたら、ホッピー通りの繁盛店で「大人になった孫娘」と「老人」がジョッキを傾けるのもオツなことかもしれない。

 生徒たちから戴いた花束は、仏壇にお供えした。亡き母もきっと喜んでくれているだろう。
そして、高校の正課としての演劇教育に携わり18年疾走してきた息子がそのゴールテープを切る時には、『ご苦労様でした』と優しい言葉をかけてくれるに違いない。


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