劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

卒業50年、早稲田で過ごした二日に思う

2018年10月27日 | 随想
 10月19日金曜日夕刻、高田馬場駅から久しぶりに低料金の「早大正門行き」のバスに揺られて、大学のキャンパスに入った。哲学・歴史学・心理学など一般教養科目、演劇史・戯曲研究・演劇概論など専門科目を学んだ文学部キャンパスは徒歩5分ほど離れており、こちらの本部キャンパスには、大学図書館(現・會津八一記念博物館)と坪内博士記念演劇博物館以外の建物にはあまり入らなかった。この日、8号館(現・法学学術院)を初めて訪れた。「オペラ学研究会」の例会に参加するためだった。日本演劇学会分科会西洋比較演劇研究会の仲間で私の上演活動に理解を示される森佳子氏が会の代表者だったことと、今回の新作オペラ公演の宣伝も兼ねてのことだった。
【発表報告】
1. 実際の発表経過
「悲戀~ハムレットとオフィーリア」に関する話が終わったところで、DVD上映となる。
発表時間の関係上、Prologue『お城で生まれた恋』ホレーシオ・侍女から始めてScene2の後半「オフィーリア『王子さまに、何が…』/ハムレット『生きるか、消えるか』」で止めることになった。参会者からの質問・意見に対応しながら、Ⅱ「雪女の恋」および新作ミニオペラ制作の現状にも触れて終わる。
2. 例会出席者からの意見と感想
・(DVD上映直後)『今、後悔している。なんでこれを観なかったんだろうって。この公演があることを知っていたら必ず行っていたのに。』
・シェイクスピア劇のオペラはヴェルディをはじめ何人かが挑んでいるが、成功作というものがない。『ハムレット』全体をオペラ化するのではなく、このように、人物を絞って構成する方法があることを知って面白いと思った。
・日本を素材とするオペラは『修善寺物語』などいくつか書かれているが、『夕鶴』だけがヒットしたに過ぎない。それも戯曲のセリフに忠実に対応する作曲になっている。
・演劇畑の方がオペラ台本を書かれ、作曲家と綿密に連絡を取り合いながら作品を練り上げて行かれたというのは、注目に値する。
・他。
 出席者は、代表の森佳子氏(パリ第四大学・音楽学修士/日本大学非常勤講師・文学博士)、会の主導者丸本隆氏(早稲田大学名誉教授)、運営委員の添田里子氏(昭和女子大学名誉教授)、岡田恒雄氏(明星大学教授)、新作オペラ研究者で、少人数だったが充実した会となった。
 ☆閉会後、添田里子さんと旧知の岡田恒雄氏が「雪女の恋」のチケットA席を買い求めてくださった。また、近くのレストラン(高田牧舎)で二次会が開かれ、ざっくばらんな話が広がって楽しい会食となった。
 10月21日日曜日午前、再び「学バス」に揺られて、早大正門前に降り立った。第53回ホームカミングデー、卒業後50年の卒業生としての参加である。25年の際には同期生とも顔を合わせたが、この最後のホームカミングデーはひとり後期高齢者となる身を振り返り感慨にふけることにしていた。記念式典会場は事前の抽選で、私は大隈講堂小講堂の当選となっていた。大講堂で執り行われる檀上の様子をスクリーンで眺めるわけだが、ゆったり座席に腰かけられてのことなので「良し」とすべきなのだろう。「都の西北」を高吟して式典は終わる。
 他の参会者は、三々五々、キャンパス内に立ち並ぶ模擬店へ向かっていった。稲門祭が同時開催されていて、学生諸君が「大大先輩方」に声をかけサークル運営資金の足しにしようという仕組みである。こちらは早々と引き揚げ、東西線早稲田駅から日本橋経由で都営浅草線に乗り換え帰宅した。オペラ公演「雪女の恋」のポスター撮影を翌日午前中に控えていたし、やることが山積していたからである。
 金曜日・日曜日と、母校に帰ったわけだが、演劇科を出て半世紀演劇を続けてきたことが「オペラ学研究会での発表者」につながっているし、健康で過ごしていることが「卒業50年ホームカミングデーの参加者」にもなれたことを思うと、進学が簡単でなかった時代に早稲田に身を置けた幸せ、恩師・先輩方から受けた恩、亡き母の無私の愛が胸に迫ってくるのだった。


コメント
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