劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

演劇学会、ついでに京都いつもの味めぐり

2016年12月21日 | 日本演劇学会
 12月3日~4日、2016年度日本演劇学会秋の研究集会が開かれた。テーマは「シェイクスピア ローカル・グローバル」で、シェイクスピア没後400年記念となっている。偶然ではあったが、9月3日に東京ミニオペラカンパニーvol.1「悲戀~ハムレットとオフィーリア」をプロデュースしたこと、その上演を京都産業大学(研究集会の主催校)の鈴木雅恵教授が観劇してくださったこともあって、久しぶりに都に上ることにした。
 3日は「前夜祭」で、『新作能オセロ』が大江能楽堂で上演された。四大悲劇の名作を日本に移し替えた夢幻能で、作品そのものにも随所に工夫がみられたが、何よりも印象に残ったのは、烏丸通から押小路通に入った街並みに佇む大江能楽堂だった。長い歴史を刻んだ古式豊かな建築が能楽発祥の地・京都にふさわしく溶け込んでいたからである。
 翌朝、7時半に境町通り三条の「イノダコーヒ本店」で朝食タイム。かつては、大島渚監督(京大出身)ら文化人の姿を目にする知る人ぞ知る店だったが、今や情報誌やネット社会の趨勢で、早朝から行列ができる有名店となってしまった。長身の老給仕が立ったまま高い位置から注ぐコーヒーとミルクが懐かしくも心豊かな思い出だ。
 地下鉄とバスを乗り継いで、会場校へ向かう。途中、京都精華大学を通り過ぎ、山懐に抱かれるように静かな環境の北区上賀茂・京都産業大学に到着。午前から午後にかけて12の研究発表と2つの講演が第1・2・3セミナー室で行われる。「ドイツにおけるハムレット受容史」「福田恆存の『有間皇子』に見られる芸術観」「シェイクスピア受容の日中比較試論」「データから見る現代日本のシェイクスピア上演」の発表に参加した。意見を述べたり発表者と交流を持ったり、また何人かの研究者と旧交を温めることができるのも「研究集会」という機会の有難さである。
 やや早めに会場を後にして、地下鉄「国際会館駅」からはやや遠回りだが祇園までバスを利用した。予報通り雨が落ちてきたが、車窓から見える八つ橋発祥の店や京都大学など市内のたたずまいを見ながら祇園の目抜き通りに降り立つ。立ち寄る店はいつも「権兵衛」と「いづう」と決まっている。釜揚げうどんを食した後は、鯖の棒寿司を持ち帰る。
 新幹線の時刻が迫ってきたので、京都駅までタクシーを利用することにした。年配の運転手と気が合い、車中でかつての歌舞伎俳優と映画スターの話が次から次へと出て、あっという間に駅に着く。運転手に教えてもらった「羅生門模型」(駅前に設置されている)を写真に収め、帰路につく。京都訪問にはそれなりに費用が掛かる。研究集会には意義を感じたものの、<味めぐり>の方はどうだろうか。数十年前に初めて接した店の味や雰囲気は、やはり変わった。魅力ある未知の店を探すことにしようと思う。


コメント
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