劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

「西洋比較演劇研究会」の恩恵

2011年10月05日 | 日本演劇学会
 学術団体「日本演劇学会」は4つの分科会を擁しているが、その一つに「西洋比較演劇研究会」がある。八月に日本で開催された「国際演劇学会」(於:大阪大学豊中キャンパス)は日本演劇学会共催でもあり、その運営の中枢を担いつつ成功に導いた。西洋比較演劇研究会の発足は1988年で、23年間演劇に関する活発な学術研究を推進してきている。
 私が成城大学で毎月1回(土曜日)開催される例会に出席するようになって17年ほど経つが、そこで受けた恩恵は計り知れず、後半生を豊かなものにする基盤となったと言える。西洋比較演劇研究会会報第22号(創立10周年特別記念号)に、「西洋比較演劇研究会との出会い」という拙文を寄稿したが、会の主宰者であった毛利三彌先生の知遇を得た経緯と例会へお誘いを受けたことに始まり、その中身の素晴らしさを<発表・運営・情報資料の直接的な交換>の観点からまとめている。例会終了後、会場で開かれるOne Coinのワイン・チーズパーティーは飛びっきり楽しく、会員相互の交流と情報交換の場となっていた。
 研究会による「恩恵」は私の仕事や活動に直接及んでいる。県立神奈川総合高等学校で演劇科目を担当していた当時、世界の演劇を紹介する映像資料の入手は困難だった。すると、明治大学名誉教授・青山学院大学教授をはじめ会員の先生方が快く提供してくださった。また、学年末行事「舞台系発表会」には、何人もの先生方が足を運んでくださり、高校における正規の演劇教育に携わる身にとって何よりの励ましとなった。
 やがて「日本演劇学会」会員となった私は、別の分科会「演劇と教育研究会」にも参加することになり、日本大学芸術学部で開かれた研究会での<演劇教育実践報告>に始まり、全国研究集会における発表者の機会も与えられるようになった。また、「日本演劇学会」には分科会の他に「演劇教育プロジェクト」の活動があって、その一環として「神奈川総合高校授業見学会」(2004年1月20日)が実施され、東京ばかりでなく、関西からも演劇研究者や演劇教育者が参加された。「戯曲研究B」(508教室)「基礎演技」(AVスタジオ)「テーマ学習(芸術フィールド・舞台表現)」(多目的ホール)がその内容だった。
 さて、私は、慶應義塾大学文学部で「映画演劇論」を9年間担当し、現在は、日本橋女学館高等学校・演劇研究クラスの立ち上げから現在まで講師を務めているが、その仕事場への道を拓いて下さったのも「西洋比較演劇研究会」の重鎮である先生方であった。加えて、演劇教育の仕事に止まらず、「演劇ユニット 東京ドラマポケット」(代表・佐野)の活動にも会員諸氏は理解を示され、公演ブックレットには中身の濃い文章を寄せていただいている。
 発足から現在に至るまで長年「西洋比較演劇研究会」を引っ張り発展させてこられたのは、毛利三彌先生(前日本演劇学会会長)と齋藤(楠原)偕子先生(前日本演劇学会副会長)である。人間の絆を育み、学問の深化を進められたお二人に敬意を表するとともに、「西洋比較演劇研究会」から受けた恩恵に感謝の思いを新たにしている。

※写真左は、日本演劇学会と西洋比較演劇研究会の機関誌。写真右上は、西洋比較演劇研究会の出版物。写真右下は、10月例会後の懇親会。写真下は、毛利先生と齋藤先生とのひと時。


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