劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

東京ドラマポケット、推進エンジンの充実。

2010年06月12日 | 創作活動
 演劇の三要素は「戯曲・俳優・観客」とされている。演じる者と観る者、そしてその両者を虚構の世界へ導く脚本である。しかし、実際の芝居の興行・上演となれば、座元や太夫元が小屋を提供し見物衆を集めて資金を調達しなくてはならないし、狂言方や道具方、鳴り物・衣装・鬘・小道具・木戸番に至るまで、大勢の芝居者の働きが無くては成り立たない。舞台に立つ役者たち(表方)、彼らに『ナリッ、タヤ~(成田屋)!コウ、ライッヤ~(高麗屋)!』と声を掛け芝居を楽しむ見物連中、その芝居小屋の熱気と華やかな空気は、実は、そこに姿の見えない「裏方」が生み出しているのだが、そのことに目が向けられることは少ない。
 東京ドラマポケットは、公演ごとに集団を組む「演劇ユニット」である。公演が終われば、出演者を含めた「一座」は解散となる。TDPは、これまで横浜→新宿→下北沢と上演活動を継続しているが、<全公演出演>という俳優は一人もいない。作品内容によってその都度プロデュースしキャスティングするからだ。しかし、「裏方=スタッフ」は、ユニット設立以来、制作、脚本・演出、舞台監督、美術・照明、衣装、音楽、音響など不動のコアメンバーが顔を揃えている。上演作品の方向性やレベルの維持向上には不可欠の存在である。
 このコアメンバーは、私が10年間演劇講師を務めた県立神奈川総合高等学校の卒業生たちと、その舞台技術指導スタッフとしても関わってくれた旧知の友人たちである。総合高校の卒業生たちは、今や演劇教師・音楽家・舞台スタッフのプロ・女優・大学生になっているが、その一方でユニットのメンバーとして活動している。
 さて、TDP第二期活動に入ってからは、新たに慶應義塾大学の卒業生・在学生も加わることになった。私が担当した「映画演劇論」を以前受講した学生たちである。神谷真士さんは、オペラ・舞台の人脈を駆使して十数名の公演参加者を集め、自らも出演者となった。岡 由里子さんは、留学を経て卒業後、稽古運営の責任者である演出助手を担っている。また、在学生も、制作部に所属して各自の仕事に精力を注いでいる。
 裏方=スタッフは、演劇上演のいわば推進エンジンであり、演劇ユニットの組織的基盤である。かつて演劇の授業で出会った若者たちが、質の高い舞台を推し進める「発動機」となって、稽古場を活気のある明るいものにしてくれているのは、演出者としてユニット代表者として心強い限りである。


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