劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

クラウドファンディング~活動支援と資金提供~

2021年03月16日 | オペラ
 クラウドファンディング(英語: crowdfunding)とは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。不特定多数の人が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味する[1][2]。ソーシャルファンディングとも呼ばれ[3]、日本語では「クラファン」と略されることもある[4
クラウドファンディングは防災や市民ジャーナリズム、ファンによるアーティストの支援、社会・政治運動、ベンチャー企業への出資[5] 、映画[6] 、フリーソフトウェアの開発、発明品の開発、科学研究[7] 、個人・事業会社・プロジェクトへの貸付など、幅広い分野への出資に活用されている。※出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 私がこの用語に出会ったのは、あるコンサート主催者がオペラ公演を企画した際に資金が無くこの手段を利用しようとした時だった。無名な者が見ず知らずの一般大衆から資金調達をしようと考えること自体に無理があり、しかもごく限られた層にしか興味を持たれない新作オペラが対象となると「絵にかいた餅」そのものだった。
 この企画が立ち消えになったことで、書かれた脚本・詞と完成した曲が宙に浮いてしまった。私は出会った作曲家兼ピアニストとの協働作業を埋もれさせたくなくて、自身が主宰者となり「東京ミニオペラカンパニー」というユニットを立ち上げた(その経緯および活動内容は、当ブログに掲載してあります)。奇跡的に魅力的なオペラ歌手との出会いがあり、ほかの出演者やスタッフの参加の見通しがついたことで人材は調った。
 しかし、問題は資金調達だった。出来立てほやほやで無名のオペラ団体の観客動員には限界がある。公演vol.2『雪女の恋(初演)』の場合、総経費は700万円を超えた。劇場費、道具・衣裳製作費、稽古場利用料、宣伝広告費などの直接経費についてはチケット収入でなんとか賄えても、作曲・指揮・演出・歌手(ソプラノ・メゾソプラノ・テノール・バリトン)・合唱団(12名)・演奏家(ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・ハープ・フルート)・舞台スタッフ(装置・照明・衣裳・ヘアメイク・舞台監督)・宣伝美術デザイナー・記録(DVD/舞台写真)・公演マネジメント費などの人件費(総経費の約50%)は自己資金を充てなければならなかった。我が貯えは底をついたが、この活動には「日本語による新作オペラの発展」という意義があったので、プロデューサーとしてはこの企画発案時から納得済みのことであった。
 「人はパンのみにて生きるにあらず」―文化芸術に歓びを求め、そこに生きがいを感じる人間がいてこそ、社会に潤いが生まれるのである。しかし、それを絶え間なく継続し集団として維持していくとなると、まるで絶壁をよじ登るがごとき困難と危険とを抱えることになる。いわゆる先進国の中でもっとも文化(学問・芸術・教育)予算が少ない日本、それに追い打ちをかけている「コロナ禍」で、芸術団体は<虫の息>状態に追い込まれている。
 日本の現代劇を担ってきた代表的な三劇団(俳優座・文学座・民藝)のうち、戦前から活動してきた文学座から「クラウドファンディングのお願い」が届いた。文学座には「文学座支持会」というファンの組織があり、平時における支援(チケット予約や地方公演における協力など)があるが、今は有事である。「三密」があってこその稽古、そして劇場公演に大幅な制約がかかり、劇団としての運営が困難を極めているのだ。これまでは<活動支援>で収まっていたのが、今や経営のための<資金調達>が必要となってきて、今回の「クラウドファンディング挑戦中」となっている。現時点では、目標金額1,000万円を超える応募が既にあり、次の目標2,000万円に向かいつつある。
 『女の一生』『欲望という名の電車』の主演・名女優杉村春子、その相手役を務め『花咲くチェリー』の当たり役で輝いた北村和夫、お二人とも天上にて気をもんでおられるに違いない。劇場の灯がともされ続けることを願うばかりである。
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