2010年3月28日のブログに《「劇団」の意義(1)~文学座の場合~》を書いた。「『女の一生』(森本 薫・作)の1200回を超える上演の歴史、それがもたらした上演台本・演出・演技の練りこみ…」は「劇団」という継続組織がなせる業だった。また、前回の記事《変革の時代が生み出した小劇場演劇》では、「早稲田小劇場」「転形劇場」という小劇団が近代劇の構造を破壊した仕事について述べた。こちらは一人の演出家を中心に「劇的行為の本質」を見つめつつラディカルな演劇創造を果たし、その活動は10年~20年という限られた期間に集中していた。
ここで改めて「劇団」の存在意義を考えてみたい。大劇団の場合、文学座がそうであるように、劇団のレパートリーとして名作戯曲の舞台化を柱とするのに対し、前衛的な小劇団は、従来の戯曲構造を解体して舞台芸術としての演劇そのものに光を当てようとする。したがって、前者は戯曲が中心にあるので演出者が代替わりしても創造が可能だが、後者は主宰演出家の演劇思想が中心にあるので、彼および彼についていった役者たちが劇団を解散すればそこで終わり、つまり「一代限り」なのである。そうであっても、「早稲田小劇場」や「転形劇場」が生み出した濃密な演劇世界は観客の脳裡に深く刻みこまれ生き続ける。ここにも「劇団」という同志的かつ継続的な集団だからこそ創造可能な営みがある。
さて、「劇団」はかつて演劇人にとって至極当たり前の組織形態であったが、今はプロデュース公演や演劇ユニットという劇団を超えた集合組織や断続的な演劇集団が一般的になり、「劇団」内でのみ芝居作りをする劇団員は少数派となっている。大劇団でも今や外部出演や劇団内ユニットが常態化している。
そのような状況下で、わが「演劇ユニット 東京ドラマポケット(TDP)」はどのような仕事が可能であろうか。拠って立つところは、上記の「前衛的な小劇団」の側である。しかし、「演劇ユニット」の弱点は、「劇団」と異なり一年を通して毎日稽古場に集れないことにある。「劇団」の場合は、たゆまぬ地味な営為の積み重ねが深い演技を生み出し、仲間との揺るぎない信頼関係に基づく協働作業が思いもよらぬ飛躍的な表現に結びつく。対して「演劇ユニット」は、一定期間の稽古期間と断続的な関係が条件となるため、ともすると‘消化不良’を招きやすい。それでも、TDPは、新たな舞台表現を目指して結集したメンバーの意思とエネルギーを一つにし、画期的な公演を実現しようとしている。そこにこそ「演劇ユニット」の存在意義があると考えるからだ。
今、TDPは設立5年目を迎え、来年の本公演に向けて本格的な準備態勢に入ろうとしている。第一弾は「稽古場発表会」。公演そのものとは切り離した形で、演出家と俳優が<演技そのもの>に向き合い、東京ドラマポケット独自の演技表現に磨きをかけるのが目的である。
※写真は、これまでの東京ドラマポケットの活動より。
ここで改めて「劇団」の存在意義を考えてみたい。大劇団の場合、文学座がそうであるように、劇団のレパートリーとして名作戯曲の舞台化を柱とするのに対し、前衛的な小劇団は、従来の戯曲構造を解体して舞台芸術としての演劇そのものに光を当てようとする。したがって、前者は戯曲が中心にあるので演出者が代替わりしても創造が可能だが、後者は主宰演出家の演劇思想が中心にあるので、彼および彼についていった役者たちが劇団を解散すればそこで終わり、つまり「一代限り」なのである。そうであっても、「早稲田小劇場」や「転形劇場」が生み出した濃密な演劇世界は観客の脳裡に深く刻みこまれ生き続ける。ここにも「劇団」という同志的かつ継続的な集団だからこそ創造可能な営みがある。
さて、「劇団」はかつて演劇人にとって至極当たり前の組織形態であったが、今はプロデュース公演や演劇ユニットという劇団を超えた集合組織や断続的な演劇集団が一般的になり、「劇団」内でのみ芝居作りをする劇団員は少数派となっている。大劇団でも今や外部出演や劇団内ユニットが常態化している。
そのような状況下で、わが「演劇ユニット 東京ドラマポケット(TDP)」はどのような仕事が可能であろうか。拠って立つところは、上記の「前衛的な小劇団」の側である。しかし、「演劇ユニット」の弱点は、「劇団」と異なり一年を通して毎日稽古場に集れないことにある。「劇団」の場合は、たゆまぬ地味な営為の積み重ねが深い演技を生み出し、仲間との揺るぎない信頼関係に基づく協働作業が思いもよらぬ飛躍的な表現に結びつく。対して「演劇ユニット」は、一定期間の稽古期間と断続的な関係が条件となるため、ともすると‘消化不良’を招きやすい。それでも、TDPは、新たな舞台表現を目指して結集したメンバーの意思とエネルギーを一つにし、画期的な公演を実現しようとしている。そこにこそ「演劇ユニット」の存在意義があると考えるからだ。
今、TDPは設立5年目を迎え、来年の本公演に向けて本格的な準備態勢に入ろうとしている。第一弾は「稽古場発表会」。公演そのものとは切り離した形で、演出家と俳優が<演技そのもの>に向き合い、東京ドラマポケット独自の演技表現に磨きをかけるのが目的である。
※写真は、これまでの東京ドラマポケットの活動より。