劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

東京ドラマポケットの公演製作過程①

2012年03月14日 | 演劇
 「演劇ユニット 東京ドラマポケット」は、2006年設立準備、2007年アトリエ公演『オフィーリアのかけら~予告篇』(横浜創造界隈ZAIM別館ホール)、08年本公演vol.1『音楽演劇 オフィーリアのかけら』(新宿・シアターサンモール)、10年vol.2『Shadowsシャドウズ<夏の夜の夢>に遊ぶ人々』(北沢タウンホール)を経て現在に至っている。
 今年2012年は、vol.3『全体演劇 わがジャンヌ、わがお七』(両国・シアターΧ(カイ)提携公演8.24~8.26)である。この企画は3年前から準備され、ワークショップや稽古場発表会を積み重ねてコロスドラマの可能性を探り、さらに、演劇・ダンス・音楽を融合させる‘全体演劇’を創出しようとするものである。東京ドラマポケットとしては、満を持した最大の公演になることは間違いない。また、「演劇ユニット」の視点からも記念碑的な仕事になると自負しているので、その公演製作の過程を数回にわたって記録していきたいと思う。
 「演劇ユニット」は、劇団とは異なって、代表者および数名の役員以外は、公演ごとに参加メンバー(スタッフや出演者)を募るので、組織作りを初めとする公演体制の確立に相当な時間とエネルギーを要する。今回は公演内容も大規模なものということもあり、3年掛かってようやく見通しがついてきたというところである。
 では、まず、上演準備態勢がどのように進められているかを追ってみよう。
 企画の立ち上げ段階では、公演意図や作品概要は提示されるが、脚本執筆に入るのは、劇場が決まりスタッフや出演者の目途がある程度立って公演そのものの実現性が確かなものになった時点からである。
 脚本執筆と平行して進められるのが、まずは<制作部>の編成である。激務である割には人目に立つことのないる制作部は、公演を運営し無事に完了させる上では上演活動の要(かなめ)に位置する部署である。まして、ギャランティの発生しない「参加型ユニット」においては、強い信頼関係と参加理由が根底になければ、各自のモチベーションを維持することはできない。
 事務所に日常的に詰めているのは制作スタッフだが、演出家が美術・衣装・音楽のスタッフとプラン打合せを行うこともある。また、公演参加の呼び掛けに応じてくれた俳優と喫茶店で語り合うこともある。演劇ユニットの参加メンバーとなるためには、自身が所属しているプロダクションの許可や他の公演企画との調整が必要なので、確定するまで容易ではない。
 本公演vol.3『全体演劇 わがジャンヌ、わがお七』では、ヒロインは等身大の人形となり、ドラマ上の登場人物はヒロインの父と母たち、そして周囲の人々である。脚本・演出担当として、人形作家のアトリエ訪問は欠かせない。創作人形作家・小峰恵子先生は‘産みの苦しみ’を経て、そう遠くない将来、‘ジャンヌとお七誕生’の瞬間を迎えられることだろう。

※写真は、脚本執筆現場・制作スタッフ会議・音楽スタッフ打合せ・女優との面談・人形作家アトリエの一隅。


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